堪難たえがた)” の例文
施与ほどこしには違ひなけれど、変な事には「お禁厭まじないをしてつかはされい。虫歯がうずいて堪へがたいでな。」と、成程なるほど左のほおがぷくりとうだばれたのを、堪難たえがたさまてのひらかかへて
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其時そのときだい一に堪難たえがたかんじてたのはかはきくるしみこゝわざわひへんじてさひはひとなるとつたのは、普通ふつうならば、漂流人へうりうじんが、だい一に困窮こんきうするのは淡水まみづられぬことで、其爲そのために十ちう八九はたをれてしまうのだが
○米国は市俄古シカゴ紐育ニューヨークいづこも暑気非常なる故龍動ロンドンまたは巴里パリーの如くひんき風俗は堪難たえがたし。我国夏季の気候は、温度は米国に比すれば遥に低けれど、湿気あつて汗多く出るをもて洋服には甚不便なり。
洋服論 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
分けて足のうらのざらざらするのが堪難たえがたい、生来うまれつきの潔癖、しげみの動く涼しい風にも眉をひそめて歩を移すと、博物館の此方こなた、時事新報の大看板のある樹立こだちの下に、吹上げの井戸があって
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
じつは、少年せうねんともに、たゞ一口ひとくちに、堪難たえがた空腹くうふく滿みたしたきは山々やま/\だが、てよ、いまこのちいさいうをを、周章あはてゝたいらげたとてなにになる、農夫のうふ如何いかうゑても、一合いちごうむぎはずにいて一年いちねんはかりごとをする