因縁いんえん)” の例文
しかも其の因縁いんえん糾纏錯雑きゅうてんさくざつして、果報の惨苦悲酸なる、而して其の影響の、あるい刻毒こくどくなる、或は杳渺ようびょうたる、奇もまた太甚はなはだしというべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
流し何事も是皆前世の因縁いんえんづくと斷念あきらめをれば必ず御心配は下さるまじ併しながら時節じせつ來りて若旦那の御家督かとくと成れなば其時には此久八を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ソコデその当分十年余も亜米利加アメリカ出版の学校読本が日本国中に行われて居たのも、畢竟ひっきょう私が始めてもっかえったのが因縁いんえんになったことです。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その畜生ちくしやうおとされるとは、なにかの因縁いんえんちがひございません。それは石橋いしばしすこさきに、なが端綱はづないたままみちばたの青芒あをすすきつてりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その因縁いんえんでおいらちょいちょい父親おやじの何とかてえ支那の家へ出入でいりをするから、くわしいことを知ってるんだ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「冗談じゃない本当だ。おれは君に氷水を奢られる因縁いんえんがないから、出すんだ。取らない法があるか」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
みたま因縁いんえんもうすものはまことに不思議ふしぎちからっているものらしく、これが初対面しょたいめんでありながら、相互おたがいあいだへだてのかきはきれいにられ、さながらけた姉妹きょうだいのように
時に後ろの方に當り生者必滅しやうじやひつめつ會者定離ゑしやじやうり嗚呼あゝ皆是前世ぜんせ因縁いんえん果報くわはう南無阿彌陀佛と唱ふる聲に安五郎は振返ふりかへり見れば墨染すみぞめの衣に木綿もめん頭巾づきん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この婆さんがどういう因縁いんえんか、おれを非常に可愛がってくれた。不思議なものである。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私し方へ引取し事なりと申せば文左衞門ムヽ扨はめひの事故むすめに致して九助方へ縁付えんづけつかはしたかと申に藤八は仰の通りなれども夫には因縁いんえんの御はなしあり右節事母てう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
先生はむかからすを飼っておられた。どこから来たか分らないのををやって放し飼にしたのである。先生と烏とは妙な因縁いんえんに聞える。この二つを頭の中で結びつけると一種の気持がおこる。
ケーベル先生 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)