唯々たゞ/\)” の例文
小池こいけは窓の外ばかり眺めて、インヂンから飛び散る石油の油煙ゆえんにも氣がつかぬらしく、唯々たゞ/\乘り合ひの人々に顏を見られまいとしてゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
不器用ぶきようなればお返事へんじのしやうもわからず、唯々たゞ/\こ〻ろぼそくりますとてをちゞめて引退ひきしりぞくに、桂次けいじ拍子ひようしぬけのしていよ/\あたまおもたくなりぬ。
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
伯父晋齋の目をかすめ危うい逢瀬に密会を遂げ、懐妊までした男は真実まことの伊之助でなく、見るも怖しき狸でありましたから、身の淫奔いたずらを悔いて唯々たゞ/\なげきに月日を送り
唯々たゞ/\、おさつ申上まをしあげます。」
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
れはいづれも取止とりとめのとりこし苦勞くろう御座ござりませうけれど、うでも此樣このやうのするをなにとしたら御座ござりますか、唯々たゞ/\こゝろぼそう御座ござりますとてうちなくに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
唯々たゞ/\これまでの無礼の段は幾重にもおわびを致しまする、御高免ごこうめん下さるよう
一日いちにちとこいてふせつてこと一度いちど二度にどでは御座ござりませぬ、わたし泣虫なきむし御座ございますから、その強情がうじやう割合わりあひ腑甲斐ふがひないほど掻卷かいまきえりくひついてきました、唯々たゞ/\口惜くやなみだなので
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何故なぜぬか、なにかんがへてるぞとたづたまふに、おくさまなにとお返事へんじかせまゐらすることもあらねど、唯々たゞ/\不思議ふしぎ心地こゝちいたしまする、いたしたので御座ござりませう、わたくしにもわかりませぬとへば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)