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周章
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あは
此時不意に、
波間から
跳つて、
艇中に
飛込んだ
一尾の
小魚、
日出雄少年は
小猫の
如く
身を
飜して、
捕つて
押へた。『に、
逃しては。』と
私も
周章てゝ、
其上に
轉びかゝつた。
船長は
周章てゝ
起上つたが、
怒氣滿面、けれど
自己が
醜態に
怒る
事も
出來ず、ビール
樽のやうな
腹に
手を
當てゝ、
物凄い
眼に
水夫共を
睨み
付けると、
此時私の
傍には
鬚の
長い、
頭の
禿た
實は、
少年と
共に、
只一口に、
堪難き
空腹を
滿したきは
山々だが、
待てよ、
今此小さい
魚を、
周章てゝ
平げたとて
何になる、
農夫は
如何に
飢ても、
一合の
麥を
食はずに
地に
播いて
一年の
策をする