“吝(しみ)” の例文
お蔦 食べる物をあげたいけど、ここの家は吝(しみ)ッ垂(た)れで話にならない。あたしの身上ありッたけやるから、どこかで何か食べてお行き。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
最後の甚だ吝(しみ)ったれた時間を夫婦喧嘩(げんか)に費すという身分ででもあれば、私は、大阪の土地くらい煙たい階級のいない、のんきな、明るい
すると、なんともありませんや。……あはははは、こんな吝(しみ)ッたれた喧嘩なんざあ、おかしくって、売る気にも買う気にもなれやしません
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わざと思切って吝(しみ)ったれな真似をした挙句(あげく)に過分な茶代を気張って見たり、シンネリムッツリと仏頂面(ぶっちょうづら)をして置いて急に噪(はしゃ)ぎ出して騒いで見たり
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「お前のような娘が一人あれば、こんな吝(しみ)ったれな料理屋なんかしていやしないなんて、そんなことを言うんですよ。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この大山師の、穢ない吝(しみ)ったれ野郎め! おれはもうこれからさき君みたいな男とは、いっさい、つきあわないよ。
予(かね)てから独逸人が吝(しみ)つたれで、慾深で、有る程のものは掻(か)つ払(ぱら)はずには居(を)られない癖を知つてゐるので、てんでに財産を慝(かく)まふのに智慧を絞つたものだ。
だから、一枚千二百円の、大きい硝子(ガラス)窓など、心斎橋商人の吝(しみ)ったれには、恐らく、その価値が判るまい。
大阪を歩く (新字新仮名) / 直木三十五(著)
この乙松あな、吝(しみ)ったれた施しをして自分の悪事の尻拭いをするような、けちな野郎たあ種が違うんだ
暗がりの乙松 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
……。尤も、定太郎のせいばかりじゃない。子供のときから親父のいいなり次第。張りのねえ男で、吝(しみ)ったれが盆栽を弄(いじ)るようにすっかり枝を矯(た)められてしまったせいなんでしょうが……
どぶの水を持って来て引掻(ひっか)き廻させようなんぞは、吝(しみ)ったれでお話にならねえ
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まあそう吝(しみ)ったれるなってことよ。昔やそれでも、おれの色じゃねえか。おたがい大あつあつだった頃にや、仲よく遊び𢌞りもしたし、秋の夜長をしんみり語り明かしたこともあるじゃねえか。
じゃ、その礦地とはいったい何処(どこ)にあるか。また、どうして俺がそれを見付けたかということを、これから諸君にかい摘んで話そう。しかしだ、今度は七万ミルなんてえ、吝(しみ)ったれは止めて貰うよ。
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
吝(しみ)ったれた兄哥(あにい)
常磐津(ときわず)の師匠のところへ通っている向うの子でも、仲よしの通りの古着屋の子でも、一度も自分のような吝(しみ)ったれた使いに出されたことがなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「やかましいやい糸鬢(いとびん)野郎めッ、二分や三分の端た金に吝(しみ)ッたれた騒ぎ方をするな、さ、木戸銭は先にくれてやるから、こっちの対手(あいて)の一角を出せッ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
家康の祖父(ぢい)さんだけにこんな事にも吝(しみ)つたれだつたと見える。
あんな吝(しみ)ったれな百姓なんかしかたがないじゃないか。だから財産はなくても、ちゃんと独立のできる男でなければ。青木も意気地がないじゃないか。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
人の顔の棚下ろしでゴマ化そうてえんだから恐れ入っちまうじゃありませんか、ねえ、この吝(しみ)ッたれなご面相でさ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「吝(しみ)つたれやな、こんなやとお菰(こも)に施しも出来(でけ)へんがな。」
「吝(しみ)ッたれ奴(め)! 二百匹ばかりの軍馬がなんだ。あの馬を奪りあげたのは、かくいう張飛だが、われをさして強盗とは聞き捨てならん。おれが強盗なら汝は糞賊(ふんぞく)だ」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今朝も××が来て、この際何か書けるなら、出来るだけのことはするとか言ってくれたがね、まあ病気でも癒(なお)ってから願おうと言っておいた。己はこんなにまでなって書こうとは思わん。」と先生はその吝(しみ)ったれを
黴 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
近習番頭取の土肥半蔵ときたひには、他人(ひと)の伜(せがれ)の品行まで頭痛にやむニガ虫屋の堅蔵(かたぞう)だ。——その親父(おやじ)のまえで、吝(しみ)たれた酒など飲むのは、招(よ)ばれても、こっちで、ごめん蒙(こうむ)りたい。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何だ、吝(しみ)ッたれやがッて、二両ばかしとは。——まアいいや、爺(とっ)さん、十五両もありゃあ、宿屋払いをして、あとを路銀に国へ帰れようが。……あれまた、シュクシュク始めやがったぜ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なにか。楽和(がくわ)さんには、吝(しみ)ッたれずに、たんまり銀子(ぎんす)を預けてやったか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『忌々しいな、吝(しみ)ったれ屋敷め』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「吝(しみ)ッたれめ、よこさぬか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吝(しみ)ッたれ。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)