取締とりしまり)” の例文
二上屋藤三郎ふたかみやとうさぶろうという遊女屋の亭主で、くるわ内の名望家、当時見番の取締とりしまりを勤めているのが、今むこうの路地の奥からぶらぶらと出たのであった。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鈴木町すゞきまちの代官根本善左衛門ねもとぜんざゑもん近郷きんがう取締とりしまりを托したのが一つ。谷町たにまちの代官池田岩之丞いはのじよう天満てんまの東照宮、建国寺けんこくじ方面の防備を托したのが二つ。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
立てゝ三歳なる文藏を守立もりたてて奉公人の取締とりしまり行屆ゆきとゞきしかば漸次々々しだい/\勝手かつてよくなりし故所々へ貸金とうもいたし番頭に忠兵衞と言者いふもの
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一年に三万人の生霊せいれいが、この便利な機械文明にわれてしまっている。日本に於ても浜尾子爵閣下はまおししゃくかっかが「自動車轢殺れきさつ取締とりしまりをもっと峻厳しゅんげんにせよ」
電気看板の神経 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今の交番などよりははるかに多く、駕籠かごのほかには交通機関というものがなかっただけに、取締とりしまりの目は届いたわけです。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
見ると最初が処分の件、次が生徒取締とりしまりの件、その他二三ヶ条である。狸は例の通りもったいぶって、教育の生霊いきりょうという見えでこんな意味の事を述べた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
梅田女学校の生徒が、荷駄馬にだばに蹴飛ばされてこのかた、馬といふものは人を蹴るものだといふ事に気がいて、急にその取締とりしまりが厳しくなつて来たのは喜ばしい事だ。
警官けいくわん出張しゆつちやうさしてげん取締とりしまりけたのであるが、それでも參詣人さんけいにんは一かうげんい。
ふまでもない、四馬路スマロ東京とうきやう銀座ぎんざだ。が、君子國くんしこく日本にほんのやうに四かくめん取締とりしまりなどもとよりあらうはずもなく、それは字義通じぎどほりの不夜城ふやじやうだ。人間にんげんうごく。燈灯ともしび映發えいはつする。自動車じどうしやく。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
こんな事は何とか政府で取締とりしまりの方法がないものでしょうか。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
その筋の取締とりしまりが弛んだ
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
それを区役所に問うのは余りにおろかであろう。むしろ行政上無縁の墓の取締とりしまりがあるか、もしあるなら、どう取り締まることになっているかということを問うにくはない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
旗本の取締とりしまりは若年寄の役目で、町方の岡つ引などはまるつ切り齒が立たなかつたのです。
「はあ、そうかい。そりゃあ」と漠々ばくばくたる挨拶あいさつをした。挨拶が漠々たると共に、部屋のなかも朦朧もうろう取締とりしまりがなくなって来る。今宵は月だ。月だが、まだがある。のに日は落ちた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其方共儀忠節ちうせつの計ひとは申乍ら用役ようやく身分みぶんを以て家事不取締とりしまりいたし候段屹度叱り申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
看板で見たようなものじゃあない。上品で、気高いくらいでね。玉とも雪とも、しかもその乳、腹、腰の露呈あらわなことはまた看板以上、西洋人だし、地方のことだから、取締とりしまりも自然ゆるやかなんだろう。
取締とりしまりの目は屆いたわけです。
銭形平次捕物控:282 密室 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)