双親ふたおや)” の例文
そこで彼は敵打かたきうち一行いっこうが熊本の城下を離れた、とうとう一封の書を家に遺して、彼等のあとを慕うべく、双親ふたおやにも告げず家出をした。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
予もそんな孝行をして見たいが子孝ならんと欲すれども父母たずで、海外留学中に双親ふたおやとも冥途に往かれたから今さら何ともならぬ。
その戸口にはじょうがかかっています。双親ふたおやは、どうしてこんな家がひょっこり建ったのだろうとふしぎでたまりませんでした。ウイリイは
黄金鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ここすむ近在きんざい后谷村ごやむらといふあり。此村の弥左ヱ門といふ農夫のうふおいたる双親ふたおや年頃としごろのねがひにまかせ、秋のはじめ信州善光寺へ参詣さんけいさせけり。
おめえが名主様のおせがれだとは今はじめて承知したが、何も、双親ふたおやまで引ッぱり出して怒ることはあるまい。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十九の年に双親ふたおやの勧めるまゝに、処女の純潔を彼に捧げてから今まで、必ずしも幸福に充ちてはいなかったけれども、彼女は夫に愛を持ちながら信仰の生活を続ける事が出来た。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
初めに己が洗いざら饒舌しゃべってしまって、それから向うが話し出した。まるでずっと昔から知り合っているなかのように、極親密に話したのだ。子供の時の事も聞いたし、双親ふたおやの事も聞いた。
うたへる樣に取計とりはからふ可し夫も五日の中に限りぬし日限を過す時は我も堪忍かんにん爲難しがたければ双親ふたおやに向ひ此事を詳細くはしく云て意中を聞ん和郎そなたも是を心得てと嚴重きびしく云れて忠兵衞は詮方せんかたなけれど言受し部屋を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
双親ふたおやない子は
十五夜お月さん (旧字旧仮名) / 野口雨情(著)
ここすむ近在きんざい后谷村ごやむらといふあり。此村の弥左ヱ門といふ農夫のうふおいたる双親ふたおや年頃としごろのねがひにまかせ、秋のはじめ信州善光寺へ参詣さんけいさせけり。
双親ふたおやと共に熱心な天主教てんしゆけうの信者である姫君が、悪魔に魅入みいられてゐると云ふ事は、唯事ただごとではないと思つたのである。
悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ああ自分も、双親ふたおやを持った人の子ぞ……と思って、どんなに嬉しかろうと思います
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、姫君も姫君の双親ふたおやも、信長の望に応ずる事を喜ばない。そこでうるがんは姫君の為に、言を悪魔にりて、信長の暴をいさめたのであらうと云ふのである。
悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
(御機屋の事初編に委しく記せり)手をとゞれば日限におくる、娘はさらなり、双親ふたおやも此事をうれなげきけり。
また、お蝶も、こういう所で育ったせいか、数奇さっき双親ふたおやの血をぜた心に、因果な本能がかもされたものか、とかく悪魔的な行為を好む性格が、男によって、一層早く芽を出して来つつあります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(御機屋の事初編に委しく記せり)手をとゞれば日限におくる、娘はさらなり、双親ふたおやも此事をうれなげきけり。
彼女は双親ふたおやを覚えていない。生まれた所の様子さえ、もう全く忘れている。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
双親ふたおやかへり来りてひざならべて人の家にらんは心も安からじとてうけがはず。
双親ふたおやかへり来りてひざならべて人の家にらんは心も安からじとてうけがはず。