厨房くりや)” の例文
店の番をしながら、暇をみて蕈を採る、採った蕈は中社まで持って帰り、あちらこちらの坊の厨房くりやにわけてやるのだと云った。
月夜のあとさき (新字新仮名) / 津村信夫(著)
卯木や久子も奥向きだけでなく、釜屋かまやから厨房くりやへまで出て、はたらいていた。——やかたじゅうの清掃も今朝は日ごろとちがう丁寧ていねいさであった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人ふたりだまる。厨房くりやからダリユシカがにぶかぬかほて、片手かたて頬杖ほゝづゑて、はなしかうと戸口とぐち立留たちどまつてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それぎりで客へは何の挨拶あいさつもしない、その後ろ姿を見送りもしなかった。真っ黒なねこ厨房くりやの方から来て、そッと主人あるじの高いひざの上にはい上がって丸くなった。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
攀じのぼってみると、それは厨房くりやであった。板の間の揚げ蓋が二枚だけ、横に外されていた。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
夕日なゝめに差し入る狭き厨房くりや、今正に晩餐ばんさんの準備最中なるらん、冶郎蕩児やらうたうじ魂魄たましひをさへつなぎ留めたるみどりしたゝらんばかりなるたけなす黒髪、グル/\と引ツつめたる無雑作むざふさ櫛巻くしまき紅絹裏もみうらの長き袂
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
厨房くりやのやうにくいことが知れた
わがひとに与ふる哀歌 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
二人ふたりだまる。厨房くりやからダリュシカがにぶかぬかおて、片手かたて頬杖ほおづえをして、はなしこうと戸口とぐち立留たちどまっている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
声を聞いて、弟子の一人が、厨房くりやから酒の代りを運んでゆくと、もうそこの病室に、伝七郎はいなかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猫はあわてて厨房くりやの方へ駆けていってしまった。柱時計がゆるやかに八時を打った。
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
厨房くりやの珠すだれを掻きわけて、良人おっとの前に、あきれ顔を見せた細腰さいようの美人がある。三日月の眉、星のひとみ、婉然えんぜんと笑みをふくんだ糸切り歯が柘榴ざくろ胚子たねみたいに美しい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、時々とき/″\厨房くりやいて、ダリユシカのあか寐惚顏ねぼけがほあらはれる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
主人あるじの声の方が眠そうである、厨房くりやの方で
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
武藤の従者たちは、於通に厨房くりやの案内をさせて、それから夜食のかしぎにかかるという騒ぎだ。行糧は馬の背に持っていて、地酒はのめぬ、都の酒をと、それまでたずさえているのである。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、時々ときどき厨房くりやいて、ダリュシカのあか寐惚顔ねぼけがおあらわれる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
になるとかれしづか厨房くりやちかづいて咳拂せきばらひをしてふ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
になるとかれしずか厨房くりやちかづいて咳払せきばらいをしてう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)