冷評ひやか)” の例文
誇るに西洋料理七皿をもってする、かたのごとき若様であるから、冷評ひやかせば真に受ける、打棄うっちゃって置けばしょげる、はぐらかしても乗出す。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
冷評ひやかした。乃公は決して嬉しがっているもんか、弱り切っているんだ。その証拠には此子をんな目に遭わせてもいと言った。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「君は今あの男と女を見て、冷評ひやかしましたね。あの冷評ひやかしのうちには君が恋を求めながら相手を得られないという不快の声がまじっていましょう」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その若者が何彼なにか冷評ひやかしかけるのを、眇目めつかちの重兵衞が大きい眼玉を剥いて叱り附けた。そして、自分一人夜更まで殘つた。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
宛名が女なので、「隅へは置けないぜ」とか何とか云って冷評ひやかしたら、「これは手前の姉でございます」と答えた。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
冷評ひやかしちゃいけませんよ。」と新吉はやっぱりザクザクやっている。気が気でないような心持もした。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その時にはさすがの道庵も、冷評ひやかしきれないで横を向いてしまうことさえある。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
冷評ひやかしたが何とも返事もしないで相変らず首を振っている。
月世界跋渉記 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
その若者が何彼なにか冷評ひやかしかけるのを、眇目めつかちの重兵衛が大きい眼玉をいて叱り付けた。そして、自分一人夜更まで残つた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
自分は刹那せつなあひだ、この奥さんに軽い悪意を働かせた。さうして思はず笑ひながら、こんな事を云つて冷評ひやかした。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
……いいえ、冷評ひやかすんじゃありません、深切で聞いて下さるおうちでは、(私がちっとも出ませんから。)
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小林の云い方があまり大袈裟おおげさなので、お延はかえって相手を冷評ひやかし返してやりたくなった。しかし彼女の気位きぐらいがそれを許さなかったので、彼女はわざと黙っていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
盛岡の銀座通と誰かの冷評ひやかした肴町呉服町には、一度神田の小川町で見た事のある樣な本屋や文房具店も出來た。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
こう云いかけた野村の眼には、また冷評ひやかされはしないかと云う懸念けねんがあった。が、俊助は案外真面目まじめな調子で
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お妙さんがまた、あの目で笑って、お小遣いはあるの? とは冷評ひやかしても、どこかへ連れられるのを厭味らしく考えるようななかではないに、ぬかったことをしたよ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんな事で、二人のに優劣をつける気楽な叔父を、お住とお延が馬鹿にして冷評ひやかした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
盛岡の銀座通と誰かの冷評ひやかした肴町さかなちやう呉服町ごふくちやうには、一度神田の小川町で見た事のある様な本屋や文房具店も出来た。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
二階へ返って、小座敷へ坐直る、と下階したで電話を掛けます。また冷評ひやかすだろうが、待人の名が聞える。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そんなに叱ったってしようがないよ。おれが少し冷評ひやかし過ぎたのが悪かったんだ。——ねえお延そうだろう。きっとそうに違ない。よしよし叔父さんが泣かした代りに、今に好い物をやる」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
俊助はこう冷評ひやかしながら、大井に愛想あいそを売っている給仕女を一瞥いちべつした。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
可笑しい時に笑はなけれあ、腹が減ツた時便所はばかりへ行くんですかツて、僕は後で冷評ひやかしてやツた。………………尤もなんだね、宗教家だけは少し違ふ様だ。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ほんとうに貴郎あなたの半分でも、父様が母様の言うことをくと可いんだけれど、学校でもみんなが評判をするんですもの、人が悪いのはね、私の事を(お酌さん。)なんて冷評ひやかすわ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「下手な刀屋じゃあるまいし」と迷亭君が冷評ひやかした。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
可笑をかしい時に笑はなけれあ、腹が減つた時便所はゞかりへ行くんですかつて、僕は後で冷評ひやかしてやつた。………………尤も、なんだね、宗教家だけは少し違ふ樣だ。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
など遣ったものだが、あえてこれは冷評ひやかしたのではない。その証拠には、小松原と一足ちがいに内を出て、女子おんな扇と御経料を帯に挟んで、じりじりと蝉の鳴く路を、某寺なにがしじへ。供養のため——
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遊女つとめあがりの女をと気がさして、なぜか不思議に、女もともに、あなどり、かろんじ、冷評ひやかされたような気がして、悚然ぞっとして五体を取って引緊ひきしめられたまで、きまりの悪い思いをしたのであった。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
冷評ひやかすない。これでも△△さんでなくては夜も日も明けないツて人が待つてるんだからね。然うだ、金崎の處へ行つて三兩許り踏手繰ふんだくつてやるか。——奈何どうだい、出懸けるなら一緒に出懸けないか?』
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
冷評ひやかすない。これでも△△さんでなくては夜も日も明けないツて人が待つてるんだからね。然うだ、金崎の処へ行つて三両許り踏手繰ふんだくつてやるか。——奈何どうだい、出懸けるなら一緒に出懸けないか?』
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「よ、先生か。」と冷評ひやかすような調子で言った。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
來たら冷評ひやかしてやらうと思うとつたら、遂々とう/\來なかつた。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)