亀戸かめいど)” の例文
旧字:龜戸
「そんなのじゃありませんよ——今日は飯田町のお由良ゆらと一緒に亀戸かめいどの天神様へ藤を見に出かける約束で、朝はやく誘いに行くと——」
「ところが、——その男の家は亀戸かめいど辺にあるらしいが、子供は蒲団を背負ったまま、神田の多町までいっちまったっていうんだ」
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
時節柄で亀戸かめいどの藤の噂が出た。藤の花から藤娘の話をよび出して、それから大津絵の話に転じて、更に鷹匠たかじょうのはなしに移る。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たとえば藤の花と牡丹ぼたんのごときはほとんど同時に咲きます。東京の電車の中の広告を見ましても亀戸かめいどの藤の案内と四ッ目の牡丹の案内とは同時に出ます。
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
初午はいうまでもなく稲荷いなりまつり、雛市は雛の市、梅見は梅見、天神祭りは二十五日の菅公祭かんこうさい、湯島、亀戸かめいど、天神と名のつくほどのところはむろんのことだが
EとUWの三人は同じ亀戸かめいどの一つ家にゐるのだから一緒なのは不思議はないが、日比谷へ帰るべきYが一緒だつたと云ふ事は、他のものはどうしてもわからなかつた。
監獄挿話 面会人控所 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
ここに亀戸かめいど押上おしあげたま堀切ほりきりかねふち四木よつぎから新宿にいじゅく金町かなまちなどへ行く乗合自動車が駐る。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
遂に決断して亀戸かめいど天神へ行く事にきめた。秀真ほつま格堂の二人は歩行あるいて往た。突きあたって左へ折れると平岡工場がある。こちらの草原にはげんげんが美しゅう咲いて居る。
車上の春光 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
向うから前橋まえばし竪町たつまち商人あきんどが江戸へ商用で出て来て、其の晩亀戸かめいど巴屋ともえやで友達と一緒に一杯飲んで、おりを下げていたが酔っているから振り落して仕舞って、九五縄くごなわばかり提げ
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二人のために亀戸かめいどの近くに小さな家を見つけ、自分のところにあった世帯道具は何から何まで二人に与えて、そうして自分だけがもとの家に裸同様になって残ったのである。……
花を持てる女 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
今は到底売れないが昔亀戸かめいどの「ツルシ」といって、今張子はりこの亀の子や兵隊さんがありますが、あの種類たぐいで、裸体の男が前を出して、そのきへ石を附けて、張子の虎の首の動くようなのや
亀戸かめいどから市川へ出、八幡を過ぎ船橋へあらわれ、津田沼から幕張を経、検見川けみがわの宿まで来た時であったが、茶屋へ休んで一杯ひっかけ、いざ行こうと腰を上げた時、ふと眼についたものがあった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
新三郎は其の数ヶ月ぜん医者坊主いしゃぼうず山本志丈やまもとしじょうといっしょに亀戸かめいどへ梅見に往って、其の帰りに志丈の知っている横川の飯島平左衛門いいじまへいざえもんと云う旗下はたもとの別荘へ寄ったが、其の時平左衛門の一人娘のおつゆを知り
円朝の牡丹灯籠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「——諸戸さん、亀戸かめいどですか」
一本の花 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
天保てんぽう五年正月二日に、本所の亀戸かめいど天神に近い白河端しらかわばたというところで、中村仏庵ぶつあんという奇人が病死した。年は八十四歳であった。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
用人の話によると、小栗の屋敷はどこまでも係り合いで、女の首と碁盤とはひとまず其の屋敷の菩提寺、亀戸かめいどの慈作寺に預けることになったと云うのです。
半七捕物帳:67 薄雲の碁盤 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ちょっかいなんか出せるものですか。神妙に後をけて行くと、亀戸かめいどへ行って、深川へ廻って、それから永代えいたいを渡ってまたこっちへ戻るじゃありませんか」
同じ本に亀戸かめいど神社の画があるが、これは鳥居とやしろとばかりであつてその傍に木立と川とがある。さうしてその近辺には家も何もない、今とは形勢が非常に変つて居たものと見える。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
亀戸かめいどにいたんだけど、かアさんが病気で、お金がるからね。こっちへ変った。」
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
亀戸かめいど首振くびふり人形 一名つるし
江戸の玩具 (新字旧仮名) / 淡島寒月(著)
「正月六日の夜なかだったわね」とおしのはつぶやいた、「亀戸かめいどの寮の裏、——生垣のところから、燃えあがる火を見ていたわ」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
奥へ通ると、主人夫婦はくもった顔をそろえて半七を迎えて、かの張子の虎というのを出してみせた。虎は亀戸かめいどみやげの浮人形のたぐいで、背中に糸の穴が残っていた。
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「四半刻ありゃ、亀戸かめいどの天神様へ行って有難いお札を頂いて帰って来ますよ」
亀戸かめいどのほうの寮で、両親と娘が焼け死んだ、慥かそんな事だったな」歩きだしながら彼は声に出して云った
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その次が亀戸かめいどの藤、それから堀切ほりきりの菖蒲という順番で、そのなかでは大久保が比較的に交通の便利がいゝ方であるので、下町からわざ/\のぼってくる見物もなか/\多かった。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おなじ裏長屋でもお津賀の家は小綺麗に住まっているらしく、軒には亀戸かめいど雷除らいよけの御札おふだが貼ってあった。表の戸は相変らず錠をおろしてあるので、内の様子はわからなかった。
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
むかし亀戸かめいどで売れっ子だったとか、飲み屋から追い出された、などというような経歴のもちぬしたちで、しかもおちついて世帯を持つということはなく、留さんの貯金を使いはたすと
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかし時代の変遷で、その我楽多もだんだんに減って来るので困ります。大師だいし達摩だるま雑司ぞうしすすき木兎みみずく亀戸かめいど浮人形うきにんぎょう、柴又のくくざるのたぐい、みんな私の見逃されないものです。
我楽多玩具 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
むかし亀戸かめいどで売れっ子だったとか、飲み屋から追い出された、などというような経歴のもちぬしたちで、しかもおちついて世帯を持つということはなく、留さんの貯金を使いはたすと
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いや、その信心に関係のあることではないのですが、弘化二年正月の二十四日、きょうは亀戸かめいど鷽替うそかえだというので、ひる少し前から神田三河町の家を出て、亀戸の天神様へおまいりに出かけました。
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「川向うも川向う、亀戸かめいどの先よ」
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)