やがて小僧がとり次ぐと、和尚さんの姿がそこに出て来た。久濶の友に訪われた喜びが、声やら言葉やら態度やらにあらわれて見えた。
白髪の、いかにも世話ずきらしい気の好さそうな顔をしているが、なにか心配ごとがあると見え、久濶の挨拶も、とかく沈みがちである。
ふたりは、久し振りに会って、心から久濶の想いを、慰め合った。越前守は、この人にだけは、隠すことなく、何でも話せた。
むかしの「わたのがんやく」本舗の一人っ子、いまの少壮区会議員小柴市兵衛君と手を取ってすぐわたしは久濶をじょした。
俺が久濶の挨拶をすると、慷堂や北槻中尉らは、やあやあと言ったが、すぐさま彼らだけで、俺が来る前からやっていたらしい議論をつづけた。