一構ひとかまへ)” の例文
旅亭やどや禿頭はげあたまをしへられたやうに、人馬じんば徃來ゆきゝしげ街道かいだう西にしへ/\とおよそ四五ちやうある十字街よつかどひだりまがつて、三軒目げんめ立派りつぱ煉瓦造れんぐわづくりの一構ひとかまへ
わたくしは曾てそれ等の中の一構ひとかまへが、有名な料理屋田川屋の跡だとかいふはなしを聞いたことがあつた。「たけくらべ」に描かれてゐる龍華寺りゆうげじといふ寺。
里の今昔 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しなは三人連にんづれ東隣ひがしどなり風呂ふろもらひにつた。東隣ひがしどなりといふのはおほきな一構ひとかまへ蔚然うつぜんたるもりつゝまれてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
四十男しゞふをとこ水呑百姓みづのみひやくしやうおもつたのは、學校がくかうより十町ばかりだつて松林まつばやしおく一構ひとかまへ宅地たくちようし、米倉べいさう三棟みむねならべて百姓ひやくしやう池上權藏いけがみごんざうといふをとこで、大島小學校おほしませうがくかう創立者さうりつしや恩人おんじん
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
宣長の「足引城あしひきき」説が平凡だが一番真に近いか。「あしは山のあし、引は長く引延ひきはへたるを云。とは凡て一構ひとかまへなるところを云て此は即ち山のたひらなる処をいふ」(古事記伝)というのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
洗出あらひだしの木目のたつた高からぬ塀にかゝりて、さかりはさぞと思はるゝ櫻の大木、枝ふりといゝ物好な一構ひとかまへ、門の折戸片々いつも内より開かれて、づうと玄關迄御影の敷石、椽無ゑんなしの二枚障子いつも白う
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)