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をどりあが
其の
犬どもの、
耳には
火を
立て、
牙には
火を
齒み、
焔を
吹き、
黒煙を
尾に
倦いて、
車とも
言はず、
人とも
言はず、
炎に
搦んで、
躍上り、
飛蒐り、
狂立つて
地獄の
形相を
顯したであらう
車外の
猛獸は、
見る/\
内に
氣色が
變つて
來た。
隙を
覗つたる
水兵は、サツと
出口の
扉を
排くと、
途端、
稻妻は、
猛然身を
跳らして、
彼方の
岸へ
跳上る。
つゞいて
又一發、
猛狒は
思ひがけなき
二發の
彈丸に
射られて、
蹴鞠のやうに
跳上つた。
私は
跳上つて
眼を
放つと、
唯見る、
本船々首正面の
海上に、
此時まで
閃々たる
光は
絶えず
海の
八方を
照しつゝ
既に
一海里ばかり
駛り
去つた
海蛇丸は、
此時何故か
探海電燈の
光パツと
消えて