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れいすゐ
尚去らざる
時は
全身に
冷水を
灌ぎて
其痛全く
去りし
故に、
其後頭痛の
起る
毎に
全身冷水灌漑を
行ひしが、
遂に
習慣となり、
寒中にも
冷水灌漑に
耐ゆるを
得たり。
家の
敷居を
跨いだ
宗助は、
己れにさへ
憫然な
姿を
描いた。
彼は
過去十日間毎朝頭を
冷水で
濡らしたなり、
未だ
曾て
櫛の
齒を
通した
事がなかつた。
髭は
固より
剃る
暇を
有たなかつた。
少し
丸みを
缺いた十三
日の
月が
白く
其の一つ/\の
茗荷の
葉の
上に
光つた。
冷水を
打つた
樣な
柹の
葉がゆら/\と
動いて
後の
林の
竹の
梢もさら/\と
鳴つた。