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うすきみわる
おや/\
裏庭の
榎の
大木の
彼の
葉が
散込むにしては
風もないがと、
然う
思ふと、はじめは
臆病で
障子を
開けなかつたのが、
今は
薄氣味惡くなつて
手を
拱いて、
思はず
暗い
天井を
仰いで
耳を
澄ました。
出て
戻る頃漸々東が
白み出し雨も
小降に成たる故
浮羅々々戻る
向より
尻つぺた迄
引端打古手拭で
頬冠り
傘をも指ずに
濡しよぼ
垂小脇差をば後ろへ廻し
薄氣味惡き
坊主奴が來るのを見れば長庵故
傘を
一つずつ
数えたら、
爪の
数は、百
個近くもあるであろう。
春重は、もう一
度糠袋を
握りしめて、
薄気味悪くにやりと
笑った。
凄然たる
月、
塀の
上の
釘、
監獄、
骨焼場の
遠い
焔、アンドレイ、エヒミチはさすがに
薄気味悪い
感に
打たれて、しょんぼりと
立っている。と
直後に、
吐とばかり
溜息の
声がする。
鼻の
穴が
開きッ
放しになる
程吸い
込んでいた
春重は、ふと、
行燈の
芯をかき
立てて、
薄気味悪くニヤリと
笑った。
ぱっと、
漆盆の
上へ
欝金の
絵の
具を
垂らしたように、あたりが
明るくなった。
同時に、
春重のニヤリと
笑った
薄気味悪い
顔が、こっちを
向いて
立っていた。