てつ)” の例文
新字:
てつごと健脚けんきやくも、ゆきんではとぼ/\しながら、まへつてあしあとをいんしてのぼる、民子たみこはあとから傍目わきめらず、のぼ心細こゝろぼそさ。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
りや大層たいそう大事だいじにしてあるな」醫者いしやきたな手拭てぬぐひをとつて勘次かんじひぢた。てつ火箸ひばしつたあとゆびごとくほのかにふくれてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一通りの調べが濟んで歸らうとすると、檢死に立會つた、同心長谷部彌三郎が、老巧らうかうの目明し、村雨むらさめてつをつれて、淺野屋をのぞきました。
それでどうてつふたつのうち、いづれかゞ使用しようされることになりましたが、はたしてどちらがさき使用しようされたかについてはいまなほ議論ぎろんがあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
わたくし默然もくねんとして、なほ其處そこ見詰みつめてると、暫時しばらくしてその不思議ふしぎなる岩陰いわかげから、昨日きのふ一昨日おとゝひいた、てつひゞきおこつてた。
となりのてつさんは、とうさんのおうち友伯父ともをぢさんとおなどしぐらゐで、一緒いつしよあそぶにもとうさんのはうがいくらかおとうとのやうにおもはれるところがりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
段々だん/\集注しふちゆうしてかたまつて、仕舞しまひてつぼうやうにならなくては駄目だめだとつた。さうことけばほど實際じつさいにさうなるのが、困難こんなんになつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これによつて地球ちきゆう内部ないぶとほるときの地震波ぢしんぱはやさは、地球ちきゆう鋼鐵こうてつとした場合ばあひ幾倍いくばいにもあたることがわかり、また地球ちきゆう内部ないぶてつしんからつてをり
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ひどくよわつてるやうだなと見知みしりの臺屋だいやとがめられしほどなりしが、父親ちゝおやはお辭氣じぎてつとて目上めうへひとつむりをあげたことなく廓内なか旦那だんなはずとものこと
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
面目ないどころじゃアない、みんながめて居やす、錨床いかりどこてつが来て、あのねえさんのような感心なものはえ、親の為に自分から駈込んで身を売るというのは実に感心だ
ロミオ はて、そのねらひはづれた。戀愛神キューピッド弱弓よわゆみでは射落いおとされぬをんなぢゃ。處女神ダイヤナとくそなへ、貞操ていさうてつよろひかためて、こひをさな孱弱矢へろ/\やなぞでは些小いさゝか手創てきずをもはぬをんな
なにがつて、こんなところになにわるいことでもした人間にんげんのやうに、だれをみても、かうしててつ格子かうしか、そうでなければ金網かなあみ木柵もくさく石室いしむろ板圍いたがこいなんどのなか閉込とぢこめられてさ
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
仕廻しまつて休むがいゝといふに下男彌助何さま然樣さやう致さんと早々に見世をかたつけいま戸をたてんとする處へ見上みあぐる如き大兵の武士てつ禪杖ぜんぢやうを引さげつか/\と這入はひり來り是々若いもの酒を一升かんを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かりこゝ外國ぐわいこくから輸入ゆにふする羅紗ラシヤ一ヤールの値段ねだんが五ゑんとすると、爲替相場かはせさうばが一わりさがつてればそれを五ゑん五十五せんでなければへぬのである。棉花めんくわ同樣どうやうである。輸入ゆにふてつ同樣どうやうである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
まがねふくは、てつきわけるといふもと意味いみわすれてゐて、こゝでは、たん吉備きびおこすための枕詞まくらことばにすぎません。こんな單純たんじゆんなうちに、われ/\のこゝろゆたかにする文學ぶんがくあぢはひがうたにはあるのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
汽車が來る…………眞黒なてつあせ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
てつでつくったカンヂキをはいて
冠松次郎氏におくる詩 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
てつ門扉とびら打摧うちくだかれ、敵軍てきぐん
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
てつづくりのもんはしらの、やがて平地へいちおなじにうづまつた眞中まんなかを、いぬやまるやうにはひります。わたしさかすやうにつゞきました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかしてつはじめてもちひられたころは、どうばかり使つかつてゐたまへ時代じだいよりはかならずしも文明ぶんめいすゝんでゐたといふことは出來できません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
かれうちかへるととも唐鍬たうぐはつけた。なた刀背みねてつくさびんでさうしてつてうごかしてた。つぎあさからもう勘次かんじ姿すがたはやし見出みいだされた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それに、おとなりのてつさんでも、そのいもうとのおゆうさんでも、祖父おぢいさんのお弟子でしとしてとうさんのおうちかよつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なに左樣さうでない、このじう泥土どろと、松脂まつやにとで、毛皮けがわてつのやうにかためてるのだから、小銃せうじう彈丸たまぐらいでは容易ようゐつらぬこと出來できないのさ。』とわたくしなぐさめた。
ポンと寅を川ん中へほうり込んだ時にゃア、おらあフーッてって這ッちまった、あのなげ永代橋えいてえよつべえに這って向うまで渡って、箱崎のてつ爺さんの屋台店やてえみせへ飛び込んで
「もう一つの入口は、雜用藏の方から入るので、その扉はてつさんで内から閉めてありますから、外からは開ける工夫もなく、それに棧も引手もほこりが一パイで五、六日は開けた樣子もありません」
宗助そうすけ電車でんしや終點しゆうてんまでて、運轉手うんてんしゆ切符きつぷわたしたときには、もうそらいろひかりうしなひかけて、しめつた徃來わうらいに、くらかげつのころであつた。りやうとして、てつはしらにぎつたら、きふさむ心持こゝろもちがした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
誘引さそひに來たれども夫は用向ようむきもあればゆかれぬとことわりしに其時貴殿おまへ扇子あふぎを落して來たからかしくれろと云ふ故てつあふぎかしつた其日鴻の巣の金兵衞が金五百兩かちしを見ておのれは先へ廻り金兵衞が歸りを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
てつできたへた友情いうじやうをかついで
冠松次郎氏におくる詩 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
方々かた/″\と、そばなるてつ圓柱まるばしら
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
黒雲くろくもいて、んでき、いなづまのやうに、てつもんいし唐戸からとにも、さへぎらせず、眞赤まつかむねほのほつゝんで、よわをんなひました。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もちろんこのてつ甲胄かつちゆうほかに、革製かはせいのものもあつたとおもはれますが、これはとっくにくさつてしまひ、いまのこつてをりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ぢいやはとうさんのまへで、爐邊ろばたにあるふとてつ火箸ひばし取出とりだしました。それで澁柿しぶかきあなをあけました。くりくとおなじやうにその澁柿しぶかきにくべました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
卯平うへい時々とき/″\鹽鮭しほざけ一切ひときれ古新聞紙ふるしんぶんしはしつゝんでては火鉢ひばちてつ火箸ひばしわたして、すこいぶ麁朶そだいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此處こゝ秘密ひみつ塲所ばしよ入口いりくちです。』と櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさわたくし顧見かへりみた。此時このときはまだ工事こうじはじまらぬとへ、れいてつひゞききこえず、なかはシーンとして、すごほど物靜ものしづかだ。
「そんなところはありやしません、まるでてつをけ見たいな家で」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
殘しておけよかつたに皆殺せしは是非もなしドレ參らうと半四郎一人にて引擔ひきかつぎサア/\御女中さきたゝれよと云つゝ行んとせしが半四郎は大小とてつ禪杖ぜんぢやう邪魔じやまに成たればもし御女中憚りながら此大小とつゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
○「おいてつう」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
喜多きた食堂しよくだう飮酒のみく。……あのてつぼうにつかまつて、ぶるツとしながら繋目つなぎめいた踏越ふみこすのは、長屋ながや露地ろぢ溝板どぶいた地震ぢしんおもむきあり。あめ小留をやみにる。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「もう一人、中間のてつが居ります」
王鎧わうがいどんなものだとつて、これ石崇せきそうしめすや、石崇せきそう一笑いつせうしててつ如意によいもつつてくだく。王鎧わうがいおほいいかる。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むかしは兩岸りやうがん巨木きよぼくて、これふぢつな十條とすぢき、つないたわたしたとふ、いちじるしき由緒ゆゐしよがあつて、いまも古制こせいならつた、てつ釣橋つりばしだとふ……おまけにうたまである。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
日本につぽんぢやがはりのくび武士道ぶしだうとかがあつたけれど、しまぢやげると不可いけないからつて、あししばつて、くびからけて、またあひだてつ分銅ふんどうるんだつて……其處そこへ、あの、くろ
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まちはなれてから浪打際なみうちぎはまで、およそ二百もあつたはずなのが、白砂しらすなあし踏掛ふみかけたとおもふと、爪先つまさきつめたなみのさきにれたので、晝間ひるまてつなべ煮上にあげたやうなすなが、みなずぶ/″\にれて
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
てつぼうつゑをガンといつて、しりまくりのたくましい一分刈いちぶがり凸頭でこあたまが「麹町かいぢまち六丁目ろくちやうめやけとるで! いまぱつといたところだ、うむ。」と炎天えんてんに、赤黒あかぐろい、あぶらぎつたかほをして、をきよろりと、かたをゆがめて
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)