“扇子”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
せんす74.7%
おうぎ17.6%
あふぎ3.3%
おおぎ3.3%
キツパス1.1%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
銀行会社は重役頭取とうどりより下は薄給の臨時雇のものに至るまで申合せたるやうに白き立襟の洋服を手に扇子せんすをパチクリさせるなり。
洋服論 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「お前が刃物だといったのは、この扇子せんすだよ。恐ろしい時には、物が間違って見える。きっとあの泥棒もこれを刃物だと思ったにちがいない……」
死体蝋燭 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
彼はイギリス人からきいた言葉を心覚えに自分の扇子せんすに書きつけて置いて、その次ぎの会見のおりには、かなり正確にその英語を発音したという。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
扇子おうぎを開いてふたをした。紺青こんじょうにきらきらと金が散る、こけに火影の舞扇、……極彩色の幻は、あの、花瓶よりも美しい。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先年信州白島村に於て殺害せつがいして逐電致したな、それに汝は屋敷を出る時七軒町の曲り角で中根善之進を討って立退たちのいたるは汝に相違ない、其の方の常々持って居た落書らくがき扇子おうぎが落ちて居たから、たしかに其の方と知っては居れど
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と、さし俯向うつむいて、畳んだ扇子おうぎで胸をおさえた。撫肩なでがたがすらすらと、すすきのように、尾上の風になびいたのである。
道中だうちうつかひふるしの蟹目かにめのゆるんだ扇子あふぎでは峠下たふげした木戸きどしやがんで
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしは、先生せんせいなつ嘉例かれいとしてくだすつた、水色みづいろきぬべりをとつた、はい原製ばらせいすゞしい扇子あふぎを、ひざめて、むねしかつて車上しやじやう居直ゐなほつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
衣絞えもんあかるく心着こゝろづきけむ、ぎん青海波せいかいは扇子あふぎなかばほたるよりづハツとおもておほへるに、かぜさら/\とそよぎつゝ、ひかり袖口そでくちよりはらりとこぼれて、窓外さうぐわいもりなほうつくしきかげをぞきたる。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……たきつけを入れて、炭をいで、土瓶どびんを掛けて、茶盆を並べて、それから、扇子おおぎではたはたと焜炉の火口ひぐちあおぎはじめた。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
繻子しゅすの帯もきりりとして、胸をしっかと下〆したじめに女扇子おおぎを差し、余所行よそゆきなり、顔も丸顔で派手だけれども、気が済まぬか悄然しょんぼりしているのであった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
老人は膝に扇子おおぎうやうやしく腰をかがめ、
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
椰子でつくつた扇子キツパスでゆるく蚊を追ひながら、さつきから暗いヴェランダで何か考へごとをしてゐる樣子だつたけれど、球江が鏡の前に坐ると、やつと澄子は部屋のなかへ這入つて來て、「あんた、タンバガンへ乘つて涼んで來ない?」と球江を誘つた。
ボルネオ ダイヤ (旧字旧仮名) / 林芙美子(著)