“濕”のいろいろな読み方と例文

新字：湿

読み方	割合
しめ	68.1%
うるほ	8.5%
ぬ	6.4%
し	4.3%
うる	3.2%
しつ	2.1%
うるは	1.1%
うるみ	1.1%
しつと	1.1%
しめり	1.1%
じ	1.1%
じめ	1.1%
ぬら	1.1%

しめ

塗（ぬ）りたての壁（かべ）は狹苦（せまくる）しい小屋（こや）の内側（うちがは）を濕（しめ）つぽく且（かつ）闇（くら）くした。壁（かべ）の土（つち）の段々（だん／＼）に乾（かわ）くのが待遠（まちどほ）で卯平（うへい）は毎日（まいにち）床（ゆか）の上（うへ）の筵（むしろ）に坐（すわ）つて火（ひ）を焚（たい）た。

土 (旧字旧仮名) ／ 長塚節(著)

うるほ

遠（とほ）くから南（みなみ）へ廻（まは）らうとして居（ゐ）る日（ひ）は思（おも）ひの外（ほか）に暖（あたゝ）かい光（ひかり）で一帶（たい）に霜（しも）を溶（と）かしたので、何處（どこ）でも水（みづ）を打（う）つたやうな濕（うるほ）ひを持（も）つて居（ゐ）た。

土 (旧字旧仮名) ／ 長塚節(著)

ぬ

その濕（ぬ）れた小犬を山の上の掛茶屋の柱に鎖で繋いでおいて、二人は踏んでも歩けそうな目の下一面の若楓を眺めて半日暮らしたりした。

木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) ／ 田村俊子(著)

し

ひどい降りだ、斯んな日は火でも澤山おこさないと座敷が濕（し）けていけないと言ひながら圍爐裡に炭を山の樣についでゐる。流石に山の上で斯うせねばまた寒くもあるのだ。

山寺 (旧字旧仮名) ／ 若山牧水(著)

うる

勘次（かんじ）は默（だま）つて畢（しま）つて何（なん）ともいはなかつた。與吉（よきち）はおつぎに抱（だ）かれたので、おつぎの目がまだ濕（うる）うて居（ゐ）るうちに泣（な）き止（やん）だ。

土 (旧字旧仮名) ／ 長塚節(著)

しつ

己（おい）らは痘痕（あばた）と濕（しつ）つかきは大嫌（だいきら）ひと力（ちから）を入（い）れるに、主人（あるじ）の女（をんな）は吹出（ふきだ）して、夫（そ）れでも正（しよう）さん宜（よ）く私（わたし）が店（みせ）へ來（き）て下（くだ）さるの、伯母（おば）さんの痘痕（あばた）は見（み）えぬかえと笑（わら）ふに、夫（そ）れでもお前（まへ）は年寄（としよ）りだもの

たけくらべ (旧字旧仮名) ／ 樋口一葉(著)

うるは

淡い夜霧が田畑の上に動くともなく流れて、月光が柔かに濕（うるは）うてゐる。夏もまだ深からぬ夜の甘さが、草木の魂を蕩かして、天地は限りなき靜寂の夢を罩（こ）めた。

鳥影 (旧字旧仮名) ／ 石川啄木(著)

うるみ

其様な場合（ばあひ）には、瞼（まぶた）のはれぼツたい故（せい）か、層波目（ふたかわめ）が屹度（きつと）深（ふか）く刻（きざ）み込まれて、長い晴毛（まつげ）の下（した）に濕（うるみ）を持（も）つ。そして裡（うち）に燃（も）えてゐる熱（ねつ）が眼に現はれて來るのでは無いかと思はせる。

平民の娘 (旧字旧仮名) ／ 三島霜川(著)

しつと

で、靜子は下女に手傳はして、兄を寢せ、座敷を片附けてから、一人離室（はなれ）に入つた。夜氣が濕（しつと）りと籠つて、人なき室に洋燈が明るく點いてゐる。

鳥影 (旧字旧仮名) ／ 石川啄木(著)

しめり

雲（くも）は所々（ところ／″＼）墨（すみ）が染（にじ）んだ、日（ひ）の照（てり）は又（また）赫（かつ）と強（つよ）い。が、何（なん）となく濕（しめり）を帶（お）びて重（おも）かつた。

艶書 (旧字旧仮名) ／ 泉鏡花、泉鏡太郎(著)

じ

私の勇氣は、挫（くじ）けていつた。いつもの虐（しひ）たげられた氣持や懷疑心や孤獨な憂鬱（いううつ）が、崩（くづ）れゆく憤激の餘燼（よじん）に、濕（じ）め濕（じ）めと落ちかゝつた。みんなは、私が惡いと云ふ。多分、さうかも知れない。

ジエィン・エア：02 ジエィン・エア (旧字旧仮名) ／ シャーロット・ブロンテ(著)

じめ

あかつき露（づゆ）のうは濕（じめ）り

白羊宮 (旧字旧仮名) ／ 薄田泣菫、薄田淳介(著)

ぬら

蒲團（ふとん）を濕（ぬら）す汗（あせ）の臭（くさみ）が鼻（はな）を衝（つ）いた。

土 (旧字旧仮名) ／ 長塚節(著)

濕

部首:⽔ 17画