よはひ)” の例文
新字:
この人はよはひぼ我と同じくして、その家は貴族なり。心爽かにして頓智あり、會話もいとたくみなれば、人皆その言ふところを樂み聽けり。
殺されてゐる母親のお徳は、四十五六のまだ若さの殘る——といふよりは、死も、よはひも非凡の美しさを抹消し切らぬ、不思議な女でした。
こゝに恨みある身の病を養へばとて、千年ちとせよはひ、もとより保つべくもあらず、やがて哀れは夢のたゞちに消えて知る人もなき枯骨ここつとなりはてなむず。
清見寺の鐘声 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
名高き聖等ひじりたちまたかゝることあるをいへり、曰く、靈鳥フエニーチエはそのよはひ五百年に近づきて死し、後再び生る 一〇六—一〇八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
四國あたりにはこの楊桃やまももはめづらしくないともいふが、初めての私なぞには仙人でも食ふ木の實か何かのやうに思はれた。すくなくも十年のよはひは延びる。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
寶暦はうれきころ當城たうじやうあるじ眞田伊豆守幸豐公さなだいづのかみゆきとよぎみよはひわづかに十五ながら、さいびんに、とくたかく、聰明そうめい敏達びんたつきこたかかりける。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
山崎、鈴木の二人は石が嫁した時皆歿してゐたので、石はそのよはひを記憶しない。しかし夫よりは餘程の年上であつたらしいと云ふ。兎に角齡の懸隔は小さからう筈が無い。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
つとにわが名を知り給ふ如く、同じよはひの者のなかより特にわれをえらび給ふ。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
よはひ五十路いそぢは近づきぬ。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
とほ念力ねんりきの岩手の村や四日市見上る方は富士の峯をつといのち取止とりとめ鶴芝つるしば龜芝青々とよはひぞ永く打續き麓の裾野すその末廣く天神山や馬場川口柴橋しばはし大宮木綿島もめんじま吉原じゆくも打過て日脚ひあしも永き畷道なはてみち未刻ひつじさがりに來懸たり斯る折から遙か彼方より露拂ひ右左に立下に/\笠を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
我わが第二のよはひしきみにいたりて生を變ふるにおよび、彼たゞちに我をはなれ、身を他人あだしびとにゆだねぬ 一二四—一二六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
夫人は示指ひとさしゆびてゝ、みつゝ我顏を打守り、油斷のならぬ事かな、さるいちはやき風流みやびをし給ふにこそ、否々、面をあかめ給ふことかは、君のよはひにては
父は左衞門茂頼もちよりとて、よはひ古稀こきに餘れる老武者おいむしやにて、壯年の頃より數ヶ所の戰場にて類稀たぐひまれなる手柄てがらを顯はししが、今は年老たれば其子の行末を頼りに殘年を樂みける。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
あさよはひを數ふべし
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そのよはひに等しき時過ぐるまで、こゝに登るあたはずば、彼何ぞかく來るを許されしや。 —一三二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
童子のよはひ漸く長ずるに及びて、少女の訪ひ來ること漸く稀になり、はてはをり/\葡萄棚の葉の間又は柑子の樹の梢のひまより、美しき目もてそとさし覗くのみとなりぬ。
わがよはひすゝみて人おの/\その帆をおろし綱をまきをさむる時にいたれば 七九—八一
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)