香取かとり)” の例文
あとに残ったのは竜之助と、かの変人、実は変人でも愚物ぐぶつでもない、水戸の人で山崎ゆずる。新徴組の一人で、香取かとり流の棒をよく使います。
こうして、第三に選ばれた美しい乙女は、娘を持つ奴国の宮の母親たちのまだ誰もが予想さえもしなかった訶和郎かわろの妹の香取かとりであった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
しかし狭苦しい東京湾も当時の保吉には驚異だった。奈良朝の歌人は海に寄せる恋を「大船おおふね香取かとりの海にいかりおろしいかなる人かもの思わざらん」
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
朝家の法制にもかつて天神地祇ちぎを分たれたが、のちの宗像むなかた賀茂かも・八幡・熊野・春日かすが住吉すみよし諏訪すわ白山はくさん鹿島かしま香取かとりのごとく、有効なる組織をもって神人を諸国に派し
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
大船おほふね香取かとりうみいかりおろし如何いかなるひとものおもはざらむ 〔巻十一・二四三六〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
同君は千葉縣の人、いつか一緒に香取かとり鹿島かしまから霞ヶ浦あたりの水郷を廻らうといふ事になつてゐたのである。その日私は自分の出してゐる雜誌の七月號を遲れて編輯してゐた。
水郷めぐり (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「おお、わしのいたところか、じつは、そちだけにいってきかすが、わしはゆえあって、常陸ひたち鹿島かしまの宮、下総しもうさ香取かとりりょう神社に、七日ずつの祈願きがんをこめて参籠さんろうしておったのじゃ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先ず香取かとり鹿島かしま及び息栖いきすの三社、それに流山ながれやま在の諏訪すわの宮、常陸は阿波村の大杉明神、立木村たつきむら蛟𧍑みずち神社、それ等の神々に詣で、身も心も二つながら清めて、霊剣一通り振り納め
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
是から出船宿へ参るには、太田屋と申します宿屋の向横町むこうよこちょう真直まっすぐに這入りますと、突当りに香取かとり神社の鳥居がありまして、わき青面金剛せいめんこんごう彫付ほりつけたおおきな石塚が建って居ります。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「まず第一に、香取かとり防衛司令官の告諭こくゆであります。司令官閣下を御紹介いたします」
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
香取かとり鹿島かしまめぐり佐原より舟行して銚子ちょうしいたり、九十九里浜を過ぎて東金とうがねに往き門人遠山雲如をその村居に訪うた。雲如は江戸の人、詩酒風流のために家産を失い東金に隠棲している奇人である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そのきびしいおきての目をくぐって、箱根や草津へ湯治にゆくとか、筑波つくば赤城あかぎ、富士などへ山登りをするとか、水戸の浜から鹿島かしま香取かとりに参詣するなど、結構よろしくやっている例も稀ではなかった。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
香取かとりの海は川となりて
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
そのとき、一人の乙女おとめが垂れ下った柳の糸の中から、ふるえる両腕に水甕みずがめを持って現れた。それは兵部の宿禰の命を受けた訶和郎の妹の香取かとりであった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
諏訪様が鹿島かしま香取かとりの神に降参なされたことをきいて、失望してここから別れて、越後へお帰りになったなどというのは、後に歴史の本を読んだ人の考えたことで、安房あわや上総で
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
香取かとり氏はかう病牀びやうしやうにある夏雄の心理を解釈した。わたしも恐らくさうだらうと思ふ。所がその或男に、この逸話を話して聞かせたら、それはさもあるべき事だと、即座に賛成の意を表した。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かとりの海と人麿ひとまろは詠みました、かとりといえば、たれしもが当然、下総しもうさ常陸ひたち香取かとり鹿島かしまを聯想いたします、はるばるとえびすに近い香取鹿島の大海原おおうなばらに、大船を浮べて碇泊した大らかな気持
一人は踊の中で、君長の視線の的となっていた濃艶な若い大夫の妻であった。一人は松明の明りの下で、兄の訶和郎かわろと並んで立っている兵部ひょうぶの宿禰の娘、香取かとりであった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ゆえにかりに二三の同名の大字が地形やや相似たとしても必ずしも一つを他の原因とはすることができないが同じ地名は二つだけ他にある。一つは下総しもうさ香取かとり多古たこ町の大字である。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
鹿島かしま香取かとりの二大社の前面まで、海の潮がゆたかにたたえていた時代に、印度インドの仏さまとやや近い名をもった海の神が、船に乗り数々の福徳を満載して、たとえば宮古島の世積綾船よづみあやふねのように
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
シバスズメ、ニワスズメ 同 香取かとり