)” の例文
大后の幸でませる故は、奴理能美がへる蟲、一度はふ蟲になり、一度はかひこになり、一度は飛ぶ鳥になりて、三くさかはあやしき蟲二七あり。
神前寺内に立てる樹も富家ふうかの庭にわれし樹も、声振り絞って泣き悲しみ、見る見る大地の髪の毛は恐怖に一々竪立じゅりつなし、柳は倒れ竹は割るる折しも
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
連年の養蚕やうさんの失敗を恢復くわいふくしようと、非常に手をひろげてつた蚕が、気候の具合で、すつかりはづれて、一時に田地の半分ほども人手に渡して了ふといふ始末。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「垂乳根の母が繭隠まよごもりいぶせくもあるか妹にあはずて」というのがあり、巻十三(三二五八)の長歌に、「たらちねの母が養ふ蚕の、繭隠り気衝いきづきわたり」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
春から秋までは蚕をい、そのあとは甘露柿をかこうのに使うのだが、今年は蚕をやらないのでいていた。おすえは潜り戸をあけてはいると、泥足のまま階段を登った。
失蝶記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
私は残った城門のかたわらにある門番と、園内の茶屋とを君に紹介した。まだその外に、鶏をう人なぞも住んでいる。この人は病身で、無聊ぶりょうに苦むところから、私達の矢場の方へ遊びに来る。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
馬をう者厩中にこれをえばく馬病を避く、故に胡俗こぞく猴を馬留ばりゅうと称す、かたち人に似、眼愁胡のごとくにして、頬陥り、けん、すなわち、食をかくす処あり、腹になく、あるくを以て食を消す
手もすまにかなしびまた書かずつはものが妻や九人ここなたりの母や
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
垂乳根たらちねはは繭隠まよごもりこもれるいもむよしもがも 〔巻十一・二四九五〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
しかして有史前の欧人はその野馬をいもした。さて今日に至っては、馬は人手で諸方へ行き渡り、地球上人の住み得る所ほとんど皆馬あり。飼養と媾合こうごうと選種の次第で、雑多の別態異種を生ぜしめた。
兵のいへことかこたず貧しくも国をたのめてあげにき
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しまにいるう人々よ