音信不通いんしんふつう)” の例文
始め町人になり百姓になり了簡れうけん次第に有附べし併此以後は三人共に音信不通いんしんふつうになし假令たとへ途中などにて出會とも挨拶あいさつも致すまじと約束を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そして、そのあいだの七年間は、音信不通いんしんふつう。各自、道につとめて、たとえ街上みちで行き会っても、言葉をかけること無用たるべし。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「ああ、そうですか、じゃあ里にられなすったおなんですね。音信不通いんしんふつうという風説だったが、そうですか。——いや、」
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
実は彼は内地の郷里に妻子を置いて、渡道とどうしたきり、音信不通いんしんふつうだが、風のたよりに彼地で妻を迎えて居ると云うことが伝えられて居るのであった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
すこぶる多端たたんなりし、しかも平地に於ける準備と異なり、音信不通いんしんふつうの場所なれば、もし必要品の一だも欠くることあらんか、到底とうていこれをもとむるに道なし
ふくろ田舍いなか嫁入よめいつたあねところ引取ひきとつてもらひまするし、女房にようぼをつけて實家さともどしたまゝ音信不通いんしんふつうをんなではありしいともなんともおもひはしませぬけれど
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今日こんにちになつて見ると、右の会員の変遷へんせんおどろもので、其内そのうち死亡しばうしたもの行方不明ゆくへふめいもの音信不通いんしんふつうものなどが有るが、知れてぶんでは、諸機械しよきかい輸入ゆにふ商会しやうくわいもの一人ひとり地方ちはう判事はんじ一人ひとり
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「無いと同然で。久しい間、音信不通いんしんふつうにしておったものですからな」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
養女にやった先は女髪結おんなかみゆいの家であったが、その後は全く音信不通いんしんふつうなので、娘が身の成行きは知られようはずがない。お千代は新聞紙上のおとみが、どうやら理由いわれなく娘のおたみであるような気がする。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ああしてむつましう一家族で居つて、私たちも死水を取つて貰ふつもりであつたものを、僅の行違から音信不通いんしんふつうなかになつて了ふと謂ふは、何ともはや浅ましい次第で、わしも誠に寐覚ねざめが悪からうと謂ふもの
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「これでも昔は親類も二三軒はあったんだが、長い間音信不通いんしんふつうにしていたものだから、今では居所も分らない。不断はさほどにも思わないが、こうやって、半日でも寝ると考えるね。何となく心細い」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたし程無ほどなく右の中学を出て、しば愛宕下町あたごしたまちつた、大学予備門だいがくよびもん受験科じゆけんくわ専門せんもん三田英学校みたえいがつこうふのに転学てんがくしました、それから大学予備門だいがくよびもんに入つて二ねんまで山田やまだとは音信不通いんしんふつうかたちたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)