“雞(にはとり)” の例文
繩(なは)には注連(しめ)のやうに刻(きざ)んだ其(そ)の赤(あか)や青(あを)や黄(き)の紙(かみ)が一杯(ぱい)にひら/\と吊(つ)られてある。彼等(かれら)は昨日(きのふ)の内(うち)に一切(さい)の粧飾(かざり)をして雞(にはとり)の鳴(な)くのを待(ま)つたのである。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
金の卵を産む雞(にはとり)を持つてゐるものは、何よりもまづその卵の数(すう)を控へ目にさせなければと古(むかし)の人も言つてゐた。
僕は風呂(ふろ)へはひりに行つた。彼是(かれこれ)午後の十一時だつた。風呂場の流しには青年が一人(ひとり)、手拭(てぬぐひ)を使はずに顔を洗つてゐた。それは毛を抜いた雞(にはとり)のやうに痩(や)せ衰へた青年だつた。
鵠沼雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いかにやせんと人々佇立(たゝずみ)たるなかに、かの老人(らうじん)よし/\所為(しかた)こそあれとて、若(わか)き者(もの)どもをつれ近(ちか)き村にいたりて雞(にはとり)をかりあつめ、雪頽(なだれ)の上にはなち餌(ゑ)をあたえつゝおもふ処へあゆませけるに
花によりそふ雞(にはとり)の
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
雞(にはとり)げやんなそつちに別(べつ)にして有(あ)んだから撒(ま)いてやんだらそつちのがにして呉(く)ろつちつたのよ、雞(にはとり)げなんざ勿體(もつてい)ねえな、さうしたらいきなり鐵火箸(かなひばし)で俺(お)れこと打(ぶ)つ飛(と)ばして
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「お前達はそれでいゝかもしれないが——」牧師はそこらをあさりまはつてゐる雞(にはとり)を見ながらいつた。「雞にしてみれば、さだめし迷惑至極だらうな、方々引ずりまはされるので。」
日を迎へむと雞(にはとり)の
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
彼(かれ)はそれから身體(からだ)が固(かた)まるやうに思(おも)ひながら、疎(あら)い白髮(しらが)の梳(くしけづ)られるのをも、微(かすか)に感覺(かんかく)を有(いう)した。雞(にはとり)の聲(こゑ)が耳(みゝ)に遠(とほ)く聞(きこ)えて消滅(せうめつ)するのを知(し)つた。彼(かれ)は遂(つひ)にうと/\と成(な)つて畢(しま)つた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)