雑炊ぞうすい)” の例文
旧字:雜炊
文吉は一度もその所業を受けたことはないが「ぐず/\言うと水雑炊ぞうすいを喰わすぞ」という言葉はタガメの口からよく聞いています。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
実際骨叩き・骨おろし・骨くずしなどと名づけて、残りの魚を入れて雑炊ぞうすいを作ったり、大根などと共に煮て食う風も処々にある。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
焚火のうえに、木の股を組み、それに懸けた雑炊ぞうすいの大鍋をまえにしながら、その夕べ、介三郎は石権や職人たちへそういった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
火事の危険であった話や、父にたすけられた話や、久方ひさかたぶり、母との対面や何やかやで、雑炊ぞうすいを食べなどしているうち、夜は白々しらじらとして来ました。
ついでに吾輩はこの船の機関長でも何でもない。だから最前から饒舌しゃべり続けた経験談なんかは、ミンナ受け売りのゴッタ雑炊ぞうすいだ。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
第四十一 牡蠣雑炊ぞうすい は寝汗のくすりで普通の雑炊へ牡蠣と葱とを入れてしばらく煮たものです。食べる時に大根卸しを添えます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ころ柿のような髪を結った霜げた女中が、雑炊ぞうすいでもするのでしょう——土間で大釜おおがまの下をいていました。番頭は帳場に青い顔をしていました。
雪霊続記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いも味噌みそ醤油しょうゆを与えると、それらの窮民らは得るに従って雑炊ぞうすいとなし、所々の鎮守ちんじゅやしろ空地あきちなどに屯集とんしゅうして野宿するさまは物すごいとさえ言わるる。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
岐阜の雑炊ぞうすいとか、加賀のくず葉巻はまきとか、竹のつつに入れて焼いて食うものもあるが、どれも本格の塩焼きのできない場合の方法であって、いわば原始的な食い方であり
鮎の食い方 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
吉は牛にやる雑炊ぞうすいきながら、ひとり柴の切れ目からぶくぶく出る泡を面白そうに眺めていた。
笑われた子 (新字新仮名) / 横光利一(著)
何しろ寒いのですから、お雑炊ぞうすいを作って出しましたら、「これで温かになります」と、ふうふう吹いて食べておりましたが、その横顔はめっきりと痩せが目立っていました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
こう云いながら鍋を取り上げ食べ残りの雑炊ぞうすいを投げてやった。と、熊の顔はすぐ引っ込みやがて雑炊を食べるらしい舌打ちの音が聞こえて来た。それが止むと同じ顔がまた窓へ現われた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その鍋の中のものが、名状すべからざる煮物なので、七兵衛も躊躇ちゅうちょしました。だが、結句、わらびの根だの、芋の屑だのを切り込んだ一種の雑炊ぞうすいであることをたしかめてみて、一箸入れてみたが
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
雑炊ぞうすいに非力ながらも笑ひけり
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
張旺ちょうおうっ。ちょうど、この辺だったな。いつかの晩、てめえが俺に、うまい雑炊ぞうすいを食わせてくれたのは!」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お留が奥の間へ立っていった後へ、秋三は牛の雑炊ぞうすいをさげて表の方から帰って来た。
南北 (新字新仮名) / 横光利一(著)
牡蠣雑炊かきぞうに 秋付録 米料理百種「日本料理の部」の「第四十一 牡蠣雑炊ぞうすい
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
わざわざ素焼すやきにしても可、塩焼き、付け焼きともに可。宴会土産みやげの折り詰の焼き魚を利用するなどもねらいである。この雑炊ぞうすいには、薬味やくみねぎにきざんだものを、混合さすことなどは賢明な方法である。
のみならず、或る晩、家へ帰ってみると、三ツぐらいな見たこともないよその女の児が、ぴいぴい泣きながら母に抱かれてサジでお雑炊ぞうすいか何かを食べさせられていた。
ふなと芋ガラとあわとをかきまぜた雑炊ぞうすいともいえぬ妙なものを暗いうちにススりあっただけなのだ。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高価な花瓶はないけや香炉などではない。口の欠けた徳利と、黒いなべだった。鍋には食べ残した雑炊ぞうすいがまだ半分残っているし、徳利は振ってみると、ごぼっと音がして、欠けた口から酒がにおう。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「やっ? ち、畜生。おれに毒入りの雑炊ぞうすいを食わせやがったんだな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おゆうはもう朝の雑炊ぞうすいを台所でいていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、お菅が雑炊ぞうすいをこさえてすすめる。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)