かかは)” の例文
旧字:
御主おんあるじの「ぐろおりや」(栄光)にもかかはる事ゆゑ、日頃親しう致いた人々も、涙をのんで「ろおれんぞ」を追ひ払つたと申す事でござる。
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
渠等かれらつう原則げんそくまもりて俗物ぞくぶつ斥罵せきばするにもかかはらず。)然しながら縦令たとひ俗物ぞくぶつ渇仰かつがうせらる〻といへども路傍みちばた道祖神だうろくじんの如く渇仰かつがうせらる〻にあらす
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
こは事難ことむづかしうなりぬべし。かなはぬまでも多少は累を免れんと、貫一は手をこまぬきつつ俯目ふしめになりて、つとめてかかはらざらんやうに持成もてなすを、満枝は擦寄すりよりて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
だからつれてゐる女の子がもう五つになると云ふにもかかはらず、まだ娘の時分の美しさを昨日きのふのやうに保存してゐた。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「貴方から嫌はれ抜いてゐるにもかかはらず、こんなに私が思つてゐると云ふ事は、十分御承知なので御座いませう」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「到底可かんでは私の方が済みません。さう致すと、自然御名誉にかかはるやうな手段も取らんければなりません」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
鈴木三重吉すずきみへきち久保田万太郎くぼたまんたらうの愛読者なれども、近頃は余り読まざるべし。風采瀟洒せうしやたるにもかかはらず、存外ぞんぐわい喧嘩けんくわには負けぬ所あり。支那にわたか何か植ゑてゐるよし。
学校友だち (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その証拠には実在の僕は目を開いてゐたのにもかかはらず、幻の僕は目をつぶつた上、稍仰向ややあふむいてゐたのである。僕は傍らにゐた芸者を顧み、「妙な顔がうつつてゐる」と言つた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
七 然れども子規しきの生活力の横溢わういつせるには驚くべし。子規はその生涯の大半を病牀びやうしやうに暮らしたるにもかかはらず、新俳句を作り、新短歌を詠じ、更に又写生文の一道をもひらけり。
病中雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
誰も? ——いや、かならずしも「誰も」ではない。彼の詩集は一二冊神田かんだ古本屋ふるぼんやにも並んでゐた。しかし「定価一円」と言ふ奥附のあるのにもかかはらず、古本屋の値段は三十銭乃至ないし二十五銭だつた。
詩集 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、僕がKの話をした小説家と云ふのは、気の小さい、大学を出たての男で、K君の名誉にかかはる事だから位、おどかして置けば、決して、モデルが誰だなぞと云ふ事を、吹聴ふいちやうする男ぢやあない。
創作 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
古写本こしやほんの伝説は、この悪魔のなり行きをつまびらかにしてゐない。が、それは我々になんかかはりがあらう。我々はこれを読んだ時に、唯かう呼びかけたいやうな心もちを感じさへすればいのである。……
悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
句の佳否かひかかはらず、これらの句が与へる感じは、蕪村ぶそんにもなければ召波せうはにもない。元禄げんろくでも言水げんすゐ一人ひとりである。自分は言水の作品中、かならずしもかう云ふ鬼趣きしゆを得た句が、最も神妙なものだとは云はぬ。
点心 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
し違つてゐるとすれば、芝居の喧嘩は僕の上へ危険をもたらさないにもかかはらず、往来の喧嘩はいつ何時なんどき危険を齎らすかもわからないことである。僕はかう云ふ興味を与へる文芸を否定するものではない。