門外もんそと)” の例文
しかし一歩門外もんそとへ出れば、最う浮世の荒い風が吹く。子供の時分の其は、何処にも有るいじめッという奴だ。私の近処にも其が居た。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
主人あるじは殿様のお通りだと聞いて、その仕事着のまんま、屋根から滑り下りて門外もんそと蹲踞はひつくばつた。少将はじろりと流し目に埃だらけの頭を見た。そして
……いまのおんな門外もんそとまで、それを送ると、入違いに女中が、端近はしぢかへ茶盆を持って出て、座蒲団をと云った工合で?……うしろに古物こぶつ衝立ついたてが立って、山鳥やまどりの剥製が覗いている。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
話かわって飯島平左衞門は孝助を門外もんそとに出し、急ぎ血潮したたる槍を杖とし、蟹のように成ってよう/\に縁側に這い上がり、よろめく足を踏みしめ踏みしめ、段々と廊下を伝い
以て願へと雖も聞入きゝいれさけびける故やが門外もんそとへ送り出すにぞお梅は腰掛こしかけにて暫時しばし休息きうそくし又々訴訟所へどつさりすわり以前の如く申故又々送り出され最早もはや夜に入り門もしまりければ是非なく腰掛こしかけに夜を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大きくはなるけれど、まだ一向に孩児ねんねえで、垣の根方ねがたに大きな穴を掘って見たり、下駄を片足門外もんそとくわえ出したり、其様そんな悪戯いたずらばかりして喜んでいる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
主殺しゅうころしの罪に落さずして彼が本懐を遂げさせんがため、わざと宮野邊源次郎と見違えさせ討たれしこと、孝助を急ぎ門外もんそといだり、自身に源次郎の寝室ねまに忍び入り、彼が刀の鬼となる覚悟
むやうに、門外もんそとやなぎくゞつて、格子戸かうしどまへうめのぞくと、二疊にでふ一人ひとりつくゑひかへてた書生しよせいて、はじめてつた、春葉しゆんえふである。十七だから、ひげなんかやさない、五分刈ごぶがりながかほで、仰向あふむいた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此処で又紛々ごたごたと入乱れ重なり合って、腋の下から才槌頭さいづちあたま偶然ひょっと出たり、外歯そっぱへ肱が打着ぶつかったり、靴のかかと生憎あいにく霜焼しもやけの足を踏んだりして、上を下へと捏返こねかえした揚句に、ワッと門外もんそとへ押出して
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
と叱りつけて、小者に門外もんそと逐出おいださせました。
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)