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釣棹
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つりざを
このくらゐの
雨は、
竹の
子笠に
及ぶものかと、
半纏ばかりの
頬被で、
釣棹を、
刺いて
見しよ、と
腰にきめた
村男が、
山笹に
七八尾、
銀色の
岩魚を
徹したのを、
得意顏にぶら
下げつゝ
御覽なさい。
釣濟ました
當の
美人が、
釣棹を
突離して、
柳の
根へ
靄を
枕に
横倒しに
成つたが
疾いか、
起るが
否や、三
人ともに
手鞠のやうに
衝と
遁げた。が、
遁げるのが、
其の
靄を
踏むのです。
普請小屋と、
花崗石の
門柱を
並べて
扉が
左右に
開いて
居る、
門の
内の
横手の
格子の
前に、
萌黄に
塗つた
中に
南と
白で
拔いたポンプが
据つて、
其縁に
釣棹と
畚とがぶらりと
懸つて
居る、
眞にもの
靜かな