遣方やりかた)” の例文
わが家の庭に立てる位の事なら差支えないがその男の遣方やりかたはそれとなく生徒の父兄を説いて金を出させ地方の新聞記者を籠絡ろうらくして輿論よろん
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その遣方やりかたの実際を見ないで、結果ばかりを見ていうのである。その遣方のしなどは見ないで、唯結果ばかり見て批評をする。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何か家の遣方やりかたに就いて、夫から叱られるようなことでも有ると、お雪は二日も三日も沈んで了う。眼に一ぱい涙をめていることも有る。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『尤も、忠志君の遣方やりかたの方が理窟に合つてると僕は思ふ。窃盜と云ふものは、由來暗い所で隱密こつそりやるべきものなんだからね。アハヽヽヽ。』
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
通例過ぎる遣方やりかたじゃが、せんという事にはかなかった。今云うた冥土の旅を、可厭いやじゃと思うても、誰もしないわけにはかぬようなものじゃ。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
流石さすが東京と実はおおいに感心させられた。その会合の遣方やりかたを習ったら、九州へのいいお土産が出来ると考えたからであった。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「君の云う通りだ。ハヽヽヽ。然しね君、支倉のような遣方やりかたでは刑事ならずとも疑わざるを得んじゃないか」
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
愛神あいしんキユピツトに立小便をさせたなどは実に人を眼中に置かない遣方やりかただと思ふ。この邸の裏からぐ対岸のピチ邸へ連接するめヹツクチオ橋の中央に長い石廊せきらうが架せられて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
金沢文庫、足利文庫など、いずれも火災少なき辺土に立てられたり。くだんの上山路村の仕方は、火災の防ぎ十分ならぬ田舎地方の処置としては、古人の所為に比してまことに拙き遣方やりかたとやいわん。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
女と云ふものは兎角こんな遣方やりかたをするものである。
いつの世にもある遣方やりかたです。そんな工合に
『尤も、忠志君の遣方やりかたの方が理屈に合ツてると僕は思ふ。窃盗ぬすみと云ふものは、由来暗い所で隠密こつそりやるべきものなんだからね。アハヽヽヽ。』
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
貴方のは人を助けて、自分で困ってる……今日こんにちまでの遣方やりかたで行けば、こう成って来るのは自然の勢じゃ有りませんか。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
靖国神社のお祭の見世物小屋が一週間ぜんから用意せられるのに比べて、一箇月も前から永久の建築物かと思はれる位頑丈な普請を念入ねんいりにして居るのは矢張やはり独逸ドイツ流の遣方やりかたであると思つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
玉脇たまわきがそれくわつかつえいて、ぼろ半纏ばんてんひっくるめの一件で、ああって大概たいがいな華族も及ばん暮しをして、交際にかけては銭金ぜにかねおしまんでありますが、なさけない事には、遣方やりかた遣方やりかたゆえ、身分
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ええ、福ちゃんの旦那さんです。彼方あっちの方の人達は大阪の商人あきんどに近いネ。皆な遣方やりかたがハゲしい」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
紳士 俺の旅行は、冥土めいどの旅の如きものぢや。昔から、事が、う云ふ事が起つて、其が破滅に近づく時は、誰もするわ。平凡な手段ぢや。通例過ぎる遣方やりかたぢやが、んと云ふ事には行かなかつた。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「僕に言わせると、ここの家の遣方やりかたは丁度あの文晁だ……皆な虚偽うそだ……虚偽の生活くらしだ……」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
小諸が盛んになるも、衰えるも、私の遣方やりかた一つにあるのだ。その私が事業しごとの記念だと言って、ここへこうして並べて、お前に見て喜んで貰おうとしているのに……アハハハハハハ
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「なんでも彼等は旦那や俺の遣方やりかたが悪いようなことを言って——無暗むやみに金をつかうようなことを言って——俺ばかり責める。若い者なぞに負けてはいないぞ。さあ——責めるなら責めて来い——」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
読者のおなかの中に置かなければ承知しないといふ遣方やりかたであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)