逆巻さかま)” の例文
旧字:逆卷
参木はその逆巻さかまく棉にとり巻かれると、いつものように思うのだ。……生産のための工業か、消費のための工業かと。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
黄河は逆巻さかまき、大山は崩れ、ふたたび天地開闢かいびゃく前の晦冥かいめいがきたかと思われた。袁紹はよろいを着るいとまもなく、単衣帛髪たんいきんはつのまま馬に飛び乗って逃げた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この民族の力強い混沌こんとんたる思想は、音楽や詩の大河となって逆巻さかまき、全ヨーロッパはその河水を飲みに来る。
そこでそのくる日は、朝早あさはやくからきて、また川へ出てみますと、まあどうでしょう、じつにりっぱなはしが、何丈なんじょうというたかさに、みず渦巻うずま逆巻さかまながれている大川おおかわの上に
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
本所化物屋敷の荒れ庭に、血沫ちしぶきをあげて逆巻さかまく十手の浪と左手の剣風……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かの逆巻さかまく波に分け入りし宮が、息絶えて浮び出でたりし其処そこの景色に、似たりともはなはだ似たる岸の布置たたずまひしげり状況ありさま乃至ないしたたふる水のあやも、透徹すきとほる底の岩面いはづらも、広さの程も、位置も、おもむき
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ゆるされたのか、かぜわって、英吉えいきちふねをいままでとは反対はんたい方角ほうがくきつけると、逆巻さかまなみは、つぎからつぎへと、ふねをほんろうして、ちょうどをもてあそぶようでありましたが、ふね
海の踊り (新字新仮名) / 小川未明(著)
それからの靴の請負うけおひの時はドウだ、糊付けのかゝとが雨に離れて、水兵は繩梯はしごから落ちて逆巻さかまなみ行衛ゆくゑ知れずになる、艦隊の方からははげしく苦情を持ち込む、本来ならば、彼時あのとき山木にしろ、君にしろ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
漕げ、逆巻さかまくを、千波万波
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「もう洪水おおみずになろうと、この川が幾つって逆巻さかまこうと、びくともする土ではないぞ」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)