あしゆび)” の例文
而して予が否と答ふるや、彼女は左手を垂れて左のあしゆびを握り、右手を挙げて均衡を保ちつつ、隻脚にて立つ事、是をひさしうしたりき。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
親爺のちぎれたあしゆびからは、紅い血が、ガーゼで拭かれたあとへ、スッスッと涌きあがった。白い繃帯は、巻くそばから紅く染った。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
鍛えに鍛えた私のあしゆびの弾力は、マットを敷いた床の上に何の物音も立てないばかりでなく、普通人が歩くよりも早い速度で飛んで行くのであった。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
つまりあのかた見失みうしわないようにしてみんながくばってる証拠しょうこなの。さあさ、そんなにあしゆび内側うちがわげないで。
『だが、あしゆびことだらうね?』と海龜うみがめねんしました。うしてはなれを裏返うらがへすことが出來できたかえ?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
指やあしゆびの名前を聞いて知ったことだが、日本には「足の指」という以外に、趾を現す言葉がない。
細胞同志の距離間隔へだたりもだんだんと遠くなって『あんな処まで俺の身体からだかしら』なぞと、湯槽ゆぶねの中であしゆびを動かしてみる位にまで長大な姿になっている。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そこ彼等かれら正式せいしきあいちやんのまはりをぐる/\をどまはりました、あまちかづきぎて時々とき/″\そのあしゆびんだり、拍子ひやうしるために前足まへあしつたりして、あひだ海龜うみがめしづかにまたかなしげにうたひました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
貴方は、貴方特有の強健なあしゆびと、アキレス腱の跳躍力を利用して、この事件を遂行されたに違い無いのです。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おびしめぼたんかけかため、あしゆびのこらず裏返うらがへす。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)