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とくほん
山の
中にあつた
父さんのお
家では、
何から
何まで
手製でした。
手習のお
手本から
讀本まで、
祖父さんの
手製でした。
まづ
何よりも
原書の
讀書力に
乏しいのは
意外でありました。それで
授ける
讀本は
難しいのかといふのに、
决してさう
難しい
書物ではありません。
西洋では
高等小學校の
程度位でせう。
これは
界隈の
貧民の
兒で、つい
此の
茗荷谷の
上に
在る、
補育院と
稱へて
月謝を
取らず、
時とすると、
讀本、
墨の
類が
施に
出て、
其上、
通學する
兒の、
其の
日暮しの
親達、
父親なり、
母親なり
父さんはこの
少年の
讀本を
書かうと
思ひ
立つた
頃に、
別につくつて
置いたお
話が一つあります。それは『
兄弟』のお
話です。それをこの
本の
後に
添へようと
思ひます。
祖父さんは
學問の
人でしたから、『
三字文』だの『
勸學篇』だのといふものを
自分で
書いて、それを
少年の
讀本のやうにして、
幼少な
時分の
父さんに
教へて
呉れました。