“裏家(うらや)” の例文
自分は六条に住んでいる与兵衛(よへえ)という米屋の娘で、商売の手違いから父母はことし十五の妹娘を連れて、裏家(うらや)へ逼塞(ひっそく)するようになり下がった。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今(いま)は、容子(ようす)だけでも疑(うたが)ふ處(ところ)はない……去年(きよねん)春(はる)の半(なか)ば頃(ごろ)から、横町(よこちやう)が門口(かどぐち)の、其(そ)の數寄(すき)づくりの裏家(うらや)に住(す)んだ美人(びじん)である。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はい私(わたくし)は斯(か)く零落を致して裏家(うらや)住いはして居っても人様の物を一厘一毛でも掠(かす)めるような根性は有りません
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
少時(しばらく)人(ひと)の住(す)まない、裏家(うらや)の庭(には)で、此(こ)の折(をり)から又(また)颯(さつ)と雲(くも)ながら月(つき)の宿(やど)つた、小草(をぐさ)の露(つゆ)を、搖(ゆり)こぼしさうな蟲(むし)の聲(こゑ)。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ほかには頼む親類や友達もなかったので、取り残された女房は伜の六三郎を連れて裏家(うらや)住みの果敢(はか)ない身となった。九郎右衛門のゆくえは遂に知れなかった。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何(ど)ういふ訳(わけ)で黄金餅(こがねもち)と名(なづ)けたかと申(まう)すに、芝(しば)将監殿橋(しやうげんどのばし)の際(きは)に極貧(ごくひん)の者ばかりが住(すん)で居(ゐ)る裏家(うらや)がござりまして金山寺屋(きんざんじや)の金兵衛(きんべゑ)と申(まう)す者の隣家(となり)に居(ゐ)るのが托鉢(たくはつ)に出(で)る坊(ばう)さんで源八(げんぱち)と申(まう)す者
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
曇(くも)つた空(そら)の星(ほし)もなし、眞黒(まつくろ)な二階(にかい)の裏(うら)の欞子窓(れんじまど)で、——こゝに今(いま)居(ゐ)るやうに——唯吉(たゞきち)が、ぐつたりして溜息(ためいき)を吐(つ)いて、大川(おほかは)の水(みづ)を遮(さへぎ)る……葉(は)の動(うご)かない裏家(うらや)の背戸(せど)の、其(そ)の一本柳(ひともとやなぎ)を
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そうしたら、どんな狭い裏家(うらや)住みでも二人が世帯を持って、かねての約束通りに末長く一緒に添い遂げられる。それを楽しみに二人は当分分かれ分かれになって、西と東で暮らすことにしよう。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)