裏家うらや)” の例文
自分は六条に住んでいる与兵衛よへえという米屋の娘で、商売の手違いから父母はことし十五の妹娘を連れて、裏家うらや逼塞ひっそくするようになり下がった。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いまは、容子ようすだけでもうたがところはない……去年きよねんはるなかごろから、横町よこちやう門口かどぐちの、數寄すきづくりの裏家うらやんだ美人びじんである。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はいわたくしく零落を致して裏家うらや住いはして居っても人様の物を一厘一毛でもかすめるような根性は有りません
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
少時しばらくひとまない、裏家うらやにはで、をりからまたさつくもながらつき宿やどつた、小草をぐさつゆを、ゆりこぼしさうなむしこゑ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ほかには頼む親類や友達もなかったので、取り残された女房は伜の六三郎を連れて裏家うらや住みの果敢はかない身となった。九郎右衛門のゆくえは遂に知れなかった。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ういふわけ黄金餅こがねもちなづけたかとまうすに、しば将監殿橋しやうげんどのばしきは極貧ごくひんの者ばかりがすん裏家うらやがござりまして金山寺屋きんざんじや金兵衛きんべゑまうす者の隣家となりるのが托鉢たくはつばうさんで源八げんぱちまうす者
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
くもつたそらほしもなし、眞黒まつくろ二階にかいうら欞子窓れんじまどで、——こゝにいまるやうに——唯吉たゞきちが、ぐつたりして溜息ためいきいて、大川おほかはみづさへぎる……うごかない裏家うらや背戸せどの、一本柳ひともとやなぎ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そうしたら、どんな狭い裏家うらや住みでも二人が世帯を持って、かねての約束通りに末長く一緒に添い遂げられる。それを楽しみに二人は当分分かれ分かれになって、西と東で暮らすことにしよう。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)