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蟠踞
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ばんきょ
ふりがな文庫
“
蟠踞
(
ばんきょ
)” の例文
おなじ敵地をふむものなら、忍剣のいうとおり、徳川家の
蟠踞
(
ばんきょ
)
する東海道こそもっとも
小太郎山
(
こたろうざん
)
に近く、もっとも地理平明である。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ここにおいて政府の反対者たる政事家はただ九州と四国とに
蟠踞
(
ばんきょ
)
していわゆる西南の天には殺気の横たわるを見るに至れり。
近時政論考
(新字新仮名)
/
陸羯南
(著)
水底に
蟠踞
(
ばんきょ
)
する岩蔭から、岩魚が跳り出して喰ったのである。岩魚は、餌に対して驚く程勇敢である。そして何でも食う。
蛙を食う岩魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
壁にそってずらりとならべられた函のなかにはそれぞれ八本の足をつけた怪物がおもいおもいに網をはって
蟠踞
(
ばんきょ
)
していた。
蜘蛛
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
荒草の間に
蟠踞
(
ばんきょ
)
していたところの巨大なる切石のはざまにうずくまって、丸くなって寝ていたところの一つの動物があったのですが、それはちょうど
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
その一方には芝笹の所々に、つつじや
榊
(
さかき
)
を
這
(
は
)
わせた植込みがあり、他方は少し高くなり、庭隅の一本の頑丈な巨松の周りに
嵩
(
かさ
)
ばった八ツ手の株が
蟠踞
(
ばんきょ
)
している。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
(西野郷には馬大尽事、井上嘉門という大金持が、千頭ほどの馬を持って、
蟠踞
(
ばんきょ
)
しているということだ。それが源女のいう所の、酒顛童子のような老人かも知れない)
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この男の意志を
蹂躪
(
じゅうりん
)
し、彼からは全然独立した・意地の悪い存在のように、その濃紺の背広の
襟
(
カラー
)
と短く刈込んだ粗い頭髪との間に
蟠踞
(
ばんきょ
)
した肉塊——
宿主
(
やどぬし
)
の眠っている時でも
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
全国に三百余侯がそれぞれ
蟠踞
(
ばんきょ
)
して、何千人かの人々が、殿様たる地位に生れ、多くの家臣に仕えられてその生を終ったであろう中に、この一巻の書を残したかの土井利位のみが
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
明治史の裡面に
蟠踞
(
ばんきょ
)
する浪人界の巨頭じゃないか。維新後の政界の
力石
(
ちからいし
)
じゃないか。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それほどの誇りを
有
(
も
)
った大商業地、富の地、殷賑の地、海の向うの朝鮮、
大明
(
だいみん
)
、
琉球
(
りゅうきゅう
)
から南海の果まで手を伸ばしている大腹中のしたたか者の
蟠踞
(
ばんきょ
)
して、一種特別の出し風を吹出し
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
天下を平定して、八世を経てはいるが、外様の大大名が辺国に
蟠踞
(
ばんきょ
)
している。外様とのみいわず、諸侯はみな、その地方では絶大の権力を有し、
人物才幹
(
じんぶつさいかん
)
、一
癖
(
くせ
)
も二
癖
(
くせ
)
もあるのが、すくなくない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
蟠踞
(
ばんきょ
)
する丘と玉突台のような牧場と。
踊る地平線:04 虹を渡る日
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
これは阿波の小松島から勝浦ノ庄へかけて
蟠踞
(
ばんきょ
)
している岩松経家という豪族にして海賊でもある家の定紋なのである。つまりは海賊の印であった。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
冤枉
(
えんおう
)
八年と大呼して監獄の名が刑務所と改まっても依然として未決監に
蟠踞
(
ばんきょ
)
して、怒号し続けている支倉は、看守達に取っては好い客ではなかった。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
この山村は、上州と信州との国境に近く、東北に八千尺の白根火山が聳え、西に吾妻山、南に鳥居峠を挟んで浅間山が
蟠踞
(
ばんきょ
)
している山また山の辺境だ。
香熊
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
で、このごろでは巴御殿、幻怪神秘のとばりを
纒
(
まと
)
い、
蟠踞
(
ばんきょ
)
するようになってしまった。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
二万三千石の小禄ながら、剣をとっては柳生の嫡流、代々この柳生の庄の盆地に
蟠踞
(
ばんきょ
)
して、家臣は片っぱしから音に聞こえた剣客ぞろい……貧乏だが腕ッぷしでは、断然天下をおさえていました。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「というと、彼奴が北隣に
蟠踞
(
ばんきょ
)
していては、将来ともこの袁術は、南へも西へも伸びることができないではないか」
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
澄み切った溪水の底に
蟠踞
(
ばんきょ
)
する巌の下に、一冬を越した可憐な山女魚が、この露の集りの雪解水を迎えると急に元気を回復するのである。山の漁師は、このことを山女魚の眼が覚めたと言っている。
早春の山女魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
「処女造庭境」に
蟠踞
(
ばんきょ
)
していた唐姫の一党はどうしたか?
南蛮秘話森右近丸
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それは将門とはまったく無関係な富士の人穴辺に
蟠踞
(
ばんきょ
)
している賊が、官衙や駅路の混乱につけ入って、働き出し
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もっとも、それが南下してきた道すじの児玉郡や
比企
(
ひき
)
地方は、古来“武蔵七党”の山野であり、熊谷、
秩父
(
ちちぶ
)
などの無数の
古源氏
(
ふるげんじ
)
が
蟠踞
(
ばんきょ
)
しているところである。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
寺にいたこともあるという——何しろ経歴の
混入
(
こみい
)
っている人物で、その
強
(
したた
)
か
者
(
もの
)
ということは、彼が美濃一国に
蟠踞
(
ばんきょ
)
してから、まだ、一尺の地も、外敵に譲らないのを見てもわかる。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
外においてのことで、叡山の者にも、感情はあるから、近年の吉水と、自分たちの
蟠踞
(
ばんきょ
)
している叡山と、どっちが社会に支持されているか、
較
(
くら
)
べてみれば、おのずから
焦々
(
いらいら
)
せずにはおられまい
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
主
(
あるじ
)
は好んで客を養い、客は
卑下
(
ひげ
)
なく大家に
蟠踞
(
ばんきょ
)
して、共に天下を談じ、後日を期するところあらんとする。——そうした風潮は、当時の社会の慣わしで、べつに異とするほどなことではなかった。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
尼ヶ崎の
荒木村重
(
あらきむらしげ
)
とか、河内の
三好下野
(
みよししもつけ
)
、同
笑岩入道
(
しょうがんにゅうどう
)
とか、遠くは大和の
信貴山
(
しぎさん
)
の多門城に、なお
蟠踞
(
ばんきょ
)
している松永弾正久秀などまで、敵地を見やれば、彼が
踏破
(
とうは
)
した土地や洛中洛外の面積よりは
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それらの厄介な敵は、多くが
江州
(
ごうしゅう
)
と美濃の境に
蟠踞
(
ばんきょ
)
していた。
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“蟠踞”の意味
《名詞》
蟠踞(ばんきょ)
踞ること。蟠ること。
広い土地を領有し、勢力を張ること。
(出典:Wiktionary)
蟠
漢検1級
部首:⾍
18画
踞
漢検1級
部首:⾜
15画
“蟠”で始まる語句
蟠
蟠居
蟠屈
蟠龍
蟠桃河
蟠作
蟠拠
蟠竜
蟠峙
蟠廻