薄淋うすさび)” の例文
なにとなく薄淋うすさびしくなつたなみおもながめながら、むねかゞみくと、今度こんど航海かうかいはじめから、不運ふうんかみ我等われら跟尾つきまとつてつたやうだ。
何処どこか近くの家で百万遍ひゃくまんべんの念仏を称え始める声が、ふと物哀れに耳についた。蘿月はたった一人で所在しょざいがない。退屈でもある。薄淋うすさびしい心持もする。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
持病といふのはそれかと切込まれて、まあそんな処でござんせう、お医者様でも草津の湯でもと薄淋うすさびしく笑つてゐるに、御本尊を拝みたいな俳優やくしやで行つたら誰れの処だといへば
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何処どこか近くの家で百萬遍ひやくまんべん念仏ねんぶつとなへ始める声が、ふと物哀ものあはれに耳についた。蘿月らげつたつた一人で所在しよざいがない。退屈たいくつでもある。薄淋うすさびしい心持こゝろもちもする。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
持病ぢびやうといふのはれかと切込きりこまれて、まあ其樣そんところでござんせう、お醫者樣ゐしやさまでも草津くさつでもと薄淋うすさびしくわらつてるに、御本尊ごほんぞんおがみたいな俳優やくしやつたられのところだといへば
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
魂祭たまゝつぎて幾日いくじつ、まだ盆提燈ぼんぢようちんのかげ薄淋うすさびしきころ新開しんかいまちいでくわん二つあり、一つはかごにて一つはさしかつぎにて、かごきく隱居處いんきよじよよりしのびやかにいでぬ、大路おほぢひとのひそめくをけば
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)