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うすさび
何処か近くの家で
百萬遍の
念仏を
称へ始める声が、ふと
物哀れに耳についた。
蘿月は
唯た一人で
所在がない。
退屈でもある。
薄淋しい
心持もする。
持病といふのは
夫れかと
切込まれて、まあ
其樣な
處でござんせう、お
醫者樣でも
草津の
湯でもと
薄淋しく
笑つて
居るに、
御本尊を
拜みたいな
俳優で
行つたら
誰れの
處だといへば
魂祭り
過ぎて
幾日、まだ
盆提燈のかげ
薄淋しき
頃、
新開の
町を
出し
棺二つあり、一つは
駕にて一つはさし
擔ぎにて、
駕は
菊の
井の
隱居處よりしのびやかに
出ぬ、
大路に
見る
人のひそめくを
聞けば