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蓬髪
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ほうはつ
ふりがな文庫
“
蓬髪
(
ほうはつ
)” の例文
旧字:
蓬髮
今は
蓬髪
(
ほうはつ
)
の、病んだ精神のうらぶれた中年男として、町を歩いている。彼は眼をあちこちに動かしながら、浦島太郎の歌を考えていた。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
僧徒らの衣形は、誤ち求めて山に入りたる若僧を除き、ことごとく
蓬髪
(
ほうはつ
)
裸足
(
はだし
)
にして僧衣
汚
(
よご
)
れ黒みたれど、醜汚の観を与うるに遠きを分とす。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
人は事なく百年も長生きすることはほとんどできないものである。ついには歳月のために尊むべき
蓬髪
(
ほうはつ
)
を頭のまわりに生ずるのが普通である。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
私はつい苦笑すると、彼は益々顔面に深い
皺
(
しわ
)
を刻んで、それ見ろ
至極
(
しごく
)
難題で困ったろうとでも云うみたいに、
胡麻塩
(
ごましお
)
の
蓬髪
(
ほうはつ
)
をくさくさ掻き立てたのだ。
荷
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
窓は北向きで、
煤
(
すす
)
けた障子が冷たい光に染まっており、その光が、こちらへ背を向けた老人の、
逞
(
たくま
)
しく広い背や、灰色になった
蓬髪
(
ほうはつ
)
をうつしだしていた。
赤ひげ診療譚:01 狂女の話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
蓬髪
(
ほうはつ
)
は昔のままだけれども哀れに赤茶けて薄くなっており、顔は黄色くむくんで、眼のふちが赤くただれて、前歯が抜け落ち、絶えず口をもぐもぐさせて
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
T君の山男のような
蓬髪
(
ほうはつ
)
としわくちゃによごれやつれた
開襟
(
かいきん
)
シャツの勇ましいいで立ちを、スマートな近代的ハイカーの
颯爽
(
さっそう
)
たる風姿と思い比べているうちに
小浅間
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
太い
眉
(
まゆ
)
の下の冷笑的な小さな眼、
蓬髪
(
ほうはつ
)
の上に卵形にもち上がってる
禿
(
は
)
げた脳天、毛むくじゃらの耳、ひどく笑うときには井のようにうち開く前歯のぬけた黒い口
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ごんごん
胡麻
(
ごま
)
は老婆の
蓬髪
(
ほうはつ
)
のようになってしまい、霜に美しく
灼
(
や
)
けた桜の最後の葉がなくなり、
欅
(
けやき
)
が風にかさかさ身を震わすごとに隠れていた風景の部分が現われて来た。
冬の日
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
武州小川の大塚
梧堂
(
ごどう
)
君の話では、夜道怪は見た者はないけれども、
蓬髪
(
ほうはつ
)
弊衣
(
へいい
)
の
垢
(
あか
)
じみた人が、大きな荷物を背負うてあるくのを、まるで夜道怪のようだと土地ではいうから
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
あたまは、あれからも伸び放題な
蓬髪
(
ほうはつ
)
だった。それを渋染の布で
粽頭巾
(
ちまきずきん
)
にしてつつむ。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼の引金にかかった理性の際限が、群集と一緒に、バネのように伸縮した。と、その先端へ、乱れた
蓬髪
(
ほうはつ
)
の海が、速力を加えて殺到した。同時に、印度人の警官隊から銃が鳴った。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
『山海経』に崑崙の西に玉山あり
西王母
(
せいおうぼ
)
居る、〈西王その
状
(
かたち
)
人のごとし、豹尾虎歯にして善く嘯く、
蓬髪
(
ほうはつ
)
勝を
戴
(
いただ
)
く、これ天の厲(厲は
灾
(
わざわい
)
なり)および五残(残殺の気なり)を司る〉。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
わしの
呪
(
のろ
)
いをいれよ! (岩かどに突立つ。烈風
蓬髪
(
ほうはつ
)
を吹く。俊寛両手を天に伸ばす)わしはあらゆる悪鬼の名によって呪うたぞ!
清盛
(
きよもり
)
は火に焼けて死ね。
宗盛
(
むねもり
)
の首は
梟
(
きゅう
)
せられよ。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
夕闇
(
ゆうやみ
)
が迫って来た。城内の廊下も薄暗い。その時、
蓬髪
(
ほうはつ
)
で急ぎ足に向こうから廊下を踏んで来るものがある。その人こそ軍艦奉行、兼外務取り扱いとして、江戸から駆けつけて来た彼の友人だ。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
蓬髪
(
ほうはつ
)
垢面
(
こうめん
)
——酒の香がぷんとただよう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
蓬髪
(
ほうはつ
)
の男
蹌踉
(
よろめ
)
き
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
彼の
蓬髪
(
ほうはつ
)
もぶしょう髭も、その着ているぼろ布子も、絞るほど濡れてしまったし、蓬髪からたれる雨のしずくが、額から頬、そして
顎
(
あご
)
や
頸
(
くび
)
へとしたたり落ちた。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
汚いシャツに色のさめた
紺
(
こん
)
の
木綿
(
もめん
)
のズボン、それにゲエトルをだらしなく巻きつけ、
地下足袋
(
じかたび
)
、
蓬髪
(
ほうはつ
)
無帽という姿の父親と、それから、髪は乱れて顔のあちこちに
煤
(
すす
)
がついて
たずねびと
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そこに
乞食
(
こじき
)
が一人、いつ見ても同じ所で陽春の日光に浴しながらしらみをとっていた。言葉どおりにぼろぼろの着物をきて、
頬
(
ほお
)
かぶりをした手ぬぐいの穴から一束の
蓬髪
(
ほうはつ
)
が飛び出していたように思う。
蒸発皿
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
海浜の宿の
籐椅子
(
とういす
)
に、疲れ果てた細長いからだを埋めて、まつげの長い大きい眼を、まぶしそうに細めて海を見ている。
蓬髪
(
ほうはつ
)
は海の風になぶられ、
品
(
ひん
)
のよい広い額に乱れかかる。
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
呼びかけた一羽の烏は、無帽
蓬髪
(
ほうはつ
)
の、ジャンパー姿で、
痩
(
や
)
せて背の高い青年である。
渡り鳥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
痩躯
(
そうく
)
、一本の
孟宗竹
(
もうそうちく
)
、
蓬髪
(
ほうはつ
)
、ぼうぼうの鬚、血の気なき、白紙に似たる頬、糸よりも細き十指、さらさら、竹の騒ぐが如き音たてて立ち、あわれや、その声、
老鴉
(
ろうあ
)
の如くに
嗄
(
しわが
)
れていた。
喝采
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
髪の毛は、いくぶん長く、けれども
蓬髪
(
ほうはつ
)
というほどのものではなし、それかと言ってポマアドで手入れしている形跡も見えない。あたりまえの鉄縁の眼鏡を掛けている。
甚
(
はなは
)
だ、非印象的である。
花燭
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
無帽
蓬髪
(
ほうはつ
)
、ジャンパー姿の
痩
(
や
)
せた青年は、水鳥の如くぱっと飛び立つ。
渡り鳥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
蓬
漢検準1級
部首:⾋
14画
髪
常用漢字
中学
部首:⾽
14画
“蓬髪”で始まる語句
蓬髪垢衣
蓬髪垢面
蓬髪花顔