腹這はらばひ)” の例文
勅使に対しても大阪侯の夫人侍女家臣等が腹這はらばひに成るのを始め、大詰の仇討あだうちの場へ日の丸の提灯ちやうちんを先に立てながみかどの行幸がある時にも舞台の人間は一切寝るのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
御米およねにするやうまくら位置ゐちうごかした。さうして其度そのたびに、したにしてゐるはうかたほねを、蒲團ふとんうへすべらした。仕舞しまひには腹這はらばひになつたまゝ兩肱りやうひぢいて、しばらくをつとはうながめてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
書くのを思切つて、そこに腹這はらばひになつて、新刊書など出して見た。口絵や序文や飛び/\に眺めたばかり、身を入れて読まれさうにもない。かゆいのに気が付いて見ると足に蚊が留つて居る。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
彼は腹這はらばひになつて、舶来の玩具おもちやひねくつてゐるのだ。
しか俯伏うつぶすのは形が悪いと云つて前へズツと乗出して腹這はらばひに成つて仕舞しまふのであるが、其れが又新しい味のある形になつて居て、決して変でなかつた。其外そのほか最敬礼の場合に皆が度度たびたび腹這はらばひに成る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
なつすでぎた九ぐわつはじめなので、大方おほかた避暑客ひしよかくはやげたあとだから、宿屋やどや比較的ひかくてき閑靜かんせいであつた。宗助そうすけうみえる一室いつしつなか腹這はらばひになつて、安井やすゐおく繪端書ゑはがきへ二三ぎやう文句もんくいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)