)” の例文
旧字:
以前は、その形で、正真正銘の熊の、と海を渡って売りに来たものがあるそうだけれど、今時はついぞ見懸けぬ、と後での話。……
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
沈香じんこう麝香じゃこう人参にんじんくま金箔きんぱくなどの仕入、遠国から来る薬の注文、小包の発送、その他達雄が監督すべきことは数々あった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「的矢丸には、いい薬がある。『くま』もあるよ。よろこべ、『鼻じろ』のきもはようなしだ。あいつも命びろいをしたよ」
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
その肉やの薬効を『本草』に記せると実際旅行中実験した欧人の話とが十分二者を同物とする拙見をたすけ立たしむ。
木曾街道で有名な、ももんじだなである。隣から隣へつづいて半丁ばかりの両側は、みな、大熊、熊のてんの皮、などという看板をかけた店ばかり。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
間ちがっているかもしれないけれども私はそう思うのだ。とにかくなめとこ山の熊のは名高いものになっている。
なめとこ山の熊 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
肩をそびやかしてへつらい笑い、巧言令色、太鼓持ちのこびを献ずるがごとくするはもとより厭うべしといえども、苦虫を噛み潰して熊のをすすりたるがごとく
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
マンドリン、熊の、お百草、パントポン、アドソルピン、腸詰め、卓上電気、その他いろいろ……
しかし肝腎かんじんの熊のがどれであるか判らないので、三人は当惑した。腹をち割ったら知れるだろうぐらいに多寡をくくっていた彼等は、今更のように途方にくれた。
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
よく胃痛腹痛をやったからくまと赤玉。通算すれば相当の量をのんでいる。販売員が年に一度やってきて、袋をしらべ、薬をつめかえ、去年の代金を受けとって行くのも目になれた姿だった。
始めてくまを水に溶き込んだように黒ずんだ濃い汁を、金盥かなだらいになみなみともどした時、医者はまゆを寄せて、こういうものが出るようでは、今のうち安静にして東京に帰った方が好かろうと注告した。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
村松検事がこれを見てくまをなめたような顔をした。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
熊のてのひらの肉がばかに美味うまいということ。熊のの相場。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
時々は熊ののやうな苦い皮肉をまじへながら。
もとより、木曾山のくまに目をつけて、それを土台に製薬の業を思い立ったのは、橘翁さまあってのことです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
亭主が早くも貝殻の詰まった箱を持ちかけると、かれは侮辱されたように、その熊のめたと同じ顔をして
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勘定の時に、それを言ってことわった。——「うまくないもののように、皆残して済みません。」ああ、娘は、茶碗を白湯さゆに汲みかえて、熊のをくれたのである。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして昔はそのへんには熊がごちゃごちゃ居たそうだ。ほんとうはなめとこ山も熊のも私は自分で見たのではない。人から聞いたり考えたりしたことばかりだ。
なめとこ山の熊 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
くまの胆嚢を「くま」といって、妙薬とされているから「アザラシの胆」も、ききめがあるにちがいない、と話がきまって、さっそくアザラシの胆をとることになった。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
熊のと熊の皮とは高い値であるということを、彼等はふだんから聞いていたからであった。
半七捕物帳:29 熊の死骸 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一口でやめようと思ったが、せっかく盛り込んだものを、食ってしまわないと、また冷かされるから、熊のを呑む気になって、茶碗に盛っただけは奇麗きれいに腹の中へ入れた。全く食慾のためではない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところが、こいのを取ることを忘れたのです。さて、老人をお客にして、いっしょにはしをつけてみると、わたしの煮たこいは苦くて、大笑いしたこともありました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「それじゃあ仕方がない。熊の皮が御不用ならば、熊のを買ってください。これは薬だから、どなたにもお役に立ちます。道中の邪魔にもならない。どうぞ買ってください。」
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「本船には、いい薬がありますよ、なにしろ役所からの命令船ですからね。『くま』もありますよ。安心してください。本船は小さいが、それこそ、大船に乗ったつもりでね」
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
鉛の湯の入口になめとこ山の熊のありという昔からの看板もかかっている。
なめとこ山の熊 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「いらっしゃいまし、熊のをさしあげますか」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高瀬で造り出した奇応丸きおうがんは、木曾山でとれるくまを土台にして、それにシナ朝鮮のほうから来る麝香じゃこうやにんじんなぞを用い、形もごく小粒な飲みいい丸薬として金粉きんぷんをかけたものですが
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
熊の皮、熊のを売るのは、そのころの木曾路の習いで、この一行はここまで来るあいだにも、たびたびこの毛皮売に付きまとわれているので、手代の義助はまたかという顔をして無愛想に断った。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
姪はくまを盃に溶かしてお菊に飲ませたりなぞした。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)