羽毛はね)” の例文
けちけちした彼の眼差まなざし紙片かみきれだの鳥の羽毛はねだのといったものに向けられて、そんなものばかり自分の部屋に寄せあつめているのである。
今迄薄暗かった空はほのぼのとしらみかかって、やわらか羽毛はねを散らしたような雲が一杯に棚引き、灰色の暗霧もやは空へ空へと晴て行く。
やさしいニンフ達は、波打った羽毛はねの黒いふさのついた兜を、いつでもパーシウスの頭にかぶらせることが出来るように、用意していました。
が——右手に持った真白な鴕鳥だちょう羽毛はねで作った大きなおうぎがブルブルとふるえながら、その悲痛きわまりない顔を隠してしまった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
藍甕あいがめをぶちまけたような大川の水が、とろっと淀んで、羽毛はねのような微風と、櫓音と、人を呼ぶ声とが、川面を刷いていた。
羽毛はねのように身軽な気持になっていた彼女は、息をはずませて笑いながら、彼の両手をつかまえ、胸に頭を押しつけて来たので、彼は一歩退くと声を荒らげて
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
細引にわなこさへたり、結び目をしめしたり、足を伸せば首が縛るやうにしたり、——鳥の羽毛はねくすぐつて
私どもの船はいままでに水に浮んだ船のなかでもいちばん軽い羽毛はねのようなものでした。
おも羽毛はねしろすゝつめた健康すこやか病體びゃうたいめたねむり! あゝ、りのまゝとはおなじでないもの! ちょう其樣そのやうせつないこひかんじながら、こひまことをばかんぜぬせつなさ!……なんわらふンぢゃ?
やがて、鳥が狂女の敷いていた破れた蒲団の羽毛はねで巣をつくったのであろう。
狂女 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
イザ施術という時には雛鳥を俎板まないたのような物へせて首と両足とを動けないようにしばって、ず胸からももへかけて羽毛はねをよく刈ってそれから鋭利な刃物はもので腿と胴の間の外皮かわを一寸ほど切る。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それは例の甘輝かんきあざなは耳の垢とりで、怪しげな唐装束からしやうぞくに鳥の羽毛はねのついた帽子をかぶりながら、言上ことあげののぼりを肩に、獅子ヶ城のやぐらのぼつたと云ふ形で、みよしの先へ陣どつたのが、船の出た時から
世之助の話 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
みどりの門をくぐれば、赤と茶いろの羽毛はねもてきたる屋根あり
ウスナの家 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
舶來の石鹸のも匂ひなむうす桃色のペリカンの羽毛はね
河馬 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
「俺は羽毛はねのように軽い、天使のように楽しく、学童のように愉快だよ。俺はまた酔漢よっぱらいのように眼が廻る。皆さん聖降誕祭お目出度う! 世界中の皆さんよ、新年お目出度う! いよう、ここだ! ほーう! ようよう!」
羽毛はねしつらへし揺籠ゆりかご
「おおかた、鳥の羽毛はねなんかも要ることがあるのでしょう。*7大齎期フィリポフキの時分になると、うちにも鳥の羽毛はねがたまりますよ。」
風は、あけ放した縁からそっと忍び込んできて、羽毛はねのようにふわりと惣七のほおをなでて、反対側の丸窓から逃げて行く。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
着て、半分羽毛はねで出来たような帽子をかぶってね、だからその帽子にはまるで翼が生えているように見えたよ。
青と黄の鳥の羽毛はねもてかれたる彼の廊の下より
ウスナの家 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
羽毛はねのついた帽子から察すれば、彼は五等官の位にあるものと断定することができる。前後の様子から察して、彼はどこかへ挨拶に来たものらしい。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
それは、羽毛はねのかたまりのように、やわらかく磯五の頬に当たって、散った。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
彼は自分の部屋の中でも、封蝋だろうが、紙屑だろうが、鳥の羽毛はねだろうが、なんでも床に落ちているものを拾いあげては、書物卓デスクの上なり窓枠の上へ載せておくのだ。
鳥の羽毛はねみたいに軽い、ふわふわしたものになってしまったように思われた。