美妙びみょう)” の例文
私の想像する新文学——そのころの新文学というと申すまでもなく尾崎紅葉おざきこうよう幸田露伴こうだろはん崛起くっきした時代で、二氏を始め美妙びみょう鴎外おうがい
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
美妙びみょうの音楽の音が響いて来て、初めは何でも遠くの方に聞こえたと思うと漸々だんだんかく、しまいには何でも池の中から湧き出て来るように思われた。
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人の姿勢がかくのごとく美妙びみょうな調和をたもっていると同時に、両者の顔と、衣服にはあくまで、対照が認められるから、画として見ると一層の興味が深い。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうしてお前さんの手紙によると、この白粉の筋道に添って、ちょうど美妙びみょうな笛のような音が聞こえて来たということであるが、それは今のところ解らない。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その不思議な美妙びみょうな響きで、トシオの耳朶みみたぶをふるわすほど近く鳴くかと思えば、また、かすかに、雲の彼方に消え入って、其処でほのかに忍び啼きして居る様な
トシオの見たもの (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その時分もヤンチャン小僧で、竹馬の友たる山田美妙びみょうの追懐談に由ると、お神楽かぐら馬鹿踊ばかおどりが頗る得意であって、児供同士が集まると直ぐトッピキピを初めてヤンヤといわせたそうだ。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
山田美妙びみょう氏の『村上義光錦旗風むらかみよしてるにしきのはたかぜ』が単行本として出版されたが、これも余り問題にならなかった。須藤南翠すどうなんすい氏の『江戸自慢男一匹』も出版されたが、これも劇場当事者からは顧みられなかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
少し彩色は濃厚すぎますが、実に非凡の出来栄え、右手に金剛杵こんごうしょを持ち、左手に金剛鈴こんごうれいを執った慈悲の御姿みすがた美妙びみょうと言おうか、端麗と言おうか、あまりの見事さに平次もしばらくは言葉もありません。
美妙びみょう楽奏がくそうが、ながれてくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ついはいってみるになって、ひさしからおくへはいると、うつくしいおじょうさんが、ことだんじていた。ちょうど、そのときいた、美妙びみょうことおもす。
春の真昼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
音楽の音はかすかではあるが美妙びみょう律呂りつりょを持っている。楽器は羯鼓かっこと笛らしい。かねの音も時々聞こえる。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
山田美妙びみょう斎とは同級だったが、格別心やすうもしなかった。正岡とはその時分から友人になった。いっしょに俳句もやった。正岡は僕よりももっと変人で、いつも気に入らぬやつとは一語も話さない。
僕の昔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
利助りすけ陶器とうき特徴とくちょうは、その繊細せんさい美妙びみょうかんじにありました。かれ薄手うすでな、純白じゅんぱく陶器とうきあい金粉きんぷんとで、花鳥かちょうや、動物どうぶつ精細せいさいえがくのにちょうじていたのであります。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「笛のような美妙びみょう! 不思議だな、全く不思議だ! 何者の音であったろう?」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うみは、永久えいきゅうにたえず美妙びみょううたをうたっています。そのうたこえにじっとみみをすましていると、いつしか、青黒あおぐろそこほうめられるような、なつかしさをかんじました。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ほんとうにうつくしいといって、おまえのよりうつくしいものがこの世界せかいにあろうか、なにがいい音色ねいろだといって、おまえのこえより美妙びみょうなものがこの世界せかいにあるはずがない。
ふるさとの林の歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)