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絆纏
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はんてん
ふりがな文庫
“
絆纏
(
はんてん
)” の例文
白けた
絆纏
(
はんてん
)
の浮浪者が出て——「爺さん、しつかりせえよ」と声をかけて片足をかつぎ、黒い
布被
(
ぬのおほ
)
ひのある車へ載せるのであつた。
釜ヶ崎
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
這入ろうと思って片足高い処に踏み掛けたが、丁度出入口の処に
絆纏
(
はんてん
)
を着た若い男が腕組をして立っていて、
屹然
(
きつぜん
)
として動かない。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
妻は
絆纏
(
はんてん
)
を脱ぎ、その上に仰臥する。看護婦が赤い布で妻の目を覆い、その腕に注射を打つ。私は妻の絆纏を抱え、その側に立っている。
澪標
(新字新仮名)
/
外村繁
(著)
膝ッ
節
(
ぷし
)
も
肘
(
ひじ
)
もムキ出しになっている
絆纏
(
はんてん
)
みたようなものを着て、
極〻
(
ごくごく
)
小さな笠を
冠
(
かぶ
)
って、やや仰いでいる様子は何ともいえない無邪気なもので
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
四、五日前には三条の河道屋というそばやに手伝いに行き、粗末な黒木綿の
絆纏
(
はんてん
)
を着て朝から夜の七時まで働きました。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
▼ もっと見る
しかもそれが済むと、自分も、
絆纏
(
はんてん
)
に後ろ
鉢捲
(
はちま
)
きをして、
池
(
いけ
)
の
端
(
はた
)
から
湯島
(
ゆしま
)
辺にかけて配達して
廻
(
まわ
)
るのだった。何だかえたいの知れない男だと私は思った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
「時に、お前のその
絆纏
(
はんてん
)
に染めてある仮名文字は、そりゃ何じゃ。さっきから、読み砕こうと思って再三苦心したが、どうもわからねえ、何のおまじないだい」
大菩薩峠:28 Oceanの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
絆纏
(
はんてん
)
のほか
羽織
(
はおり
)
なぞは着ず
伝法
(
でんぽう
)
なる好みにて中には
半元服
(
はんげんぷく
)
の凄き手取りもありと聞きしが今は鼻唄の代りに唱歌唄ふ
田舎
(
いなか
)
の女多くなりて唯わけもなく勤めすますを
葡萄棚
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
「私が振袖に
縋
(
すが
)
りつくと、それをパッと脱ぎ捨てて、用意の
絆纏
(
はんてん
)
に
頬冠
(
ほほかむ
)
りをして外に飛び出しました。お乳と胸毛と——そんなものを皆んな見てしまったんですもの」
銭形平次捕物控:239 群盗
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
赤い
蹴出
(
けだ
)
しやら、大縞の
絆纏
(
はんてん
)
やら、時計の鎖を
絡
(
から
)
ませた
縮緬
(
ちりめん
)
のへこ帯やら、赤鼻緒の黒塗り
下駄
(
げた
)
やら、ぞろぞろとその細い畠道には、人が続いて、その向こうの林の中に巡査の制服が見え
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
お糸というあやしげな
欠込女
(
かけこみおんな
)
が押原右内の娘と偽って寝所の
裀褥
(
おしとね
)
へ入り込み、薄毛の鬢を片はずしに結い、大模様の
裲襠
(
うちかけ
)
を
絆纏
(
はんてん
)
のように着崩す飛んだ御
中﨟
(
ちゅうろう
)
ぶりで、呼出し茶屋の女房やら
鈴木主水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ある夜、神田柳原河岸の米屋、村勝という
爺
(
じい
)
さんにつれられて、
唐桟
(
とうざん
)
の
絆纏
(
はんてん
)
を着て
手拭
(
てぬぐい
)
の吉原かむり、枝豆や里芋の
籠
(
かご
)
を包んだ小風呂敷を肩にむすんで、すっと
這入
(
はい
)
って来たのが秀造さんだという。
旧聞日本橋:16 最初の外国保険詐欺
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
藪は随分
繁
(
しげ
)
つてゐるが、雨はどしどし漏つて来る。八は
絆纏
(
はんてん
)
のぴつたり
肌
(
はだ
)
に
引附
(
ひつつ
)
いた上を雨に
叩
(
たた
)
かれて、いやな心持がする。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
絆纏
(
はんてん
)
にゲートルを巻いて、何か知らぬが大きな風呂敷包を腰にくくりつけたのや、
眼脂
(
めやに
)
で
眼蓋
(
まぶた
)
のくつつきさうになり、着物の黒襟が汚れてピカピカに光つてゐる女やら
釜ヶ崎
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
五分月代
(
ごぶさかやき
)
に
唐桟
(
とうざん
)
の襟附の
絆纏
(
はんてん
)
を引っかけて、ちょっと
音羽屋
(
おとわや
)
の鼠小僧といったような気取り方で、多少の凄味を
利
(
き
)
かせて、がんりきの百蔵が現われることを期待していると、意外にも
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
紺とはいえど汗に
褪
(
さ
)
め風に
化
(
かわ
)
りて異な色になりし上、幾たびか洗い
濯
(
すす
)
がれたるためそれとしも見えず、
襟
(
えり
)
の
記印
(
しるし
)
の字さえ
朧
(
おぼろ
)
げとなりし
絆纏
(
はんてん
)
を着て、
補綴
(
つぎ
)
のあたりし
古股引
(
ふるももひき
)
をはきたる男の
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「呆れた野郎だ、その
絆纏
(
はんてん
)
を脱ぎな」
大江戸黄金狂
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
左官の八は、裏を返して縫ひ直して、
継
(
つぎ
)
の上に継を当てた
絆纏
(
はんてん
)
を着て、
千駄
(
せんだ
)
ヶ
谷
(
や
)
の停車場
脇
(
わき
)
の坂の下に、改札口からさす
明
(
あかり
)
を浴びてぼんやり立つてゐた。午後八時頃でもあつたらう。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
お角が柳橋の袂まで来ると、
頬冠
(
ほおかぶ
)
りをして、襟のかかった
絆纏
(
はんてん
)
を着た遊び人
体
(
てい
)
の男が、横合いから、ひょいと出て来て、いきなり、お角の差している傘の中へ飛び込んだから、お角も驚きました。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
絆纏
(
はんてん
)
を着た職人が二人きれぎれな話をして通る。息が白く見える。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
絆
漢検1級
部首:⽷
11画
纏
漢検準1級
部首:⽷
21画
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絆纏着