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糸屑
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いとくず
ふりがな文庫
“
糸屑
(
いとくず
)” の例文
旧字:
絲屑
糸屑
(
いとくず
)
を払い落す為であったかも知れぬ。からだをくねらせて私の片頬へ縫針を突き刺した。「坊や、痛いか。痛いか。」私には痛かった。
玩具
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
老母は
糸屑
(
いとくず
)
を
袂
(
たもと
)
にたからせて、暗い茶の間で湯を沸かしにかかった。車井戸の
釣瓶
(
つるべ
)
が元気よく幾たびも庭の隅できりきりと鳴る。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
糸子は床の間に縫物の五色を、
彩
(
あや
)
と乱して、
糸屑
(
いとくず
)
のこぼるるほどの
抽出
(
ひきだし
)
を二つまであらわに抜いた針箱を窓近くに添える。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
窓の下はコールタの
剥
(
は
)
げたトタン
葺
(
ぶき
)
の平屋根で、二階から捨てる
白粉
(
おしろい
)
や
歯磨
(
はみがき
)
の水の
痕
(
あと
)
ばかりか、毎日
掃出
(
はきだ
)
す
塵
(
ちり
)
ほこりに
糸屑
(
いとくず
)
や紙屑もまざっている。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それだのに柵は俺のことを
糸屑
(
いとくず
)
ほどにも愛していなかった。あの女の恋人は夏彦であった。俺の弟を愛していたのだ。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
それから、お楽の手の爪の中に
紬
(
つむぎ
)
の
糸屑
(
いとくず
)
が、ほんの少しだが入っている、抱きついて背中を刺された時掻きむしったんだね、紬を着るのはたいがい男だ
銭形平次捕物控:024 平次女難
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
節子はむきになった兄をなだめるように、手を伸ばして
袴
(
はかま
)
に附いている
糸屑
(
いとくず
)
を取ってやりながら云った。
おばな沢
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お今は淋しげに自分を眺める静子に言いかけて、
糸屑
(
いとくず
)
を払いながら起ちあがると、浅井の着替えをそこへ持ち出して来た。
翌朝
(
あした
)
着て行く
襦袢
(
じゅばん
)
が、そこに出来かけていた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
現に江戸初期の長崎貿易は、主として
支那
(
シナ
)
からの絹糸の買入れを目あてとしていたくらいで、かの
土井大炊頭
(
どいおおいのかみ
)
の
糸屑
(
いとくず
)
の逸話が、
読本
(
よみほん
)
にも
載
(
の
)
っていて女たちもよく知っている。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
盆に乗せるとそれを持って、
前垂
(
まえだれ
)
の
糸屑
(
いとくず
)
を払いさま、
静
(
しずか
)
に壇を上って、客の前に
跪
(
ひざまず
)
いて
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何か黒塗の処々
剥
(
は
)
げた箱を使うのでしたが、その辺は綺麗に片附いていて、
糸屑
(
いとくず
)
など散らかっておりません。解き物などをするのにも、長いのは皆
揃
(
そろ
)
えてしばって、たとうへ入れてあります。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
その
糸屑
(
いとくず
)
も唇にくわえたまま、なぜか、相良金吾の目にいつまでも、消えない怒りが燃えていました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そうして
先刻
(
さっき
)
裁縫
(
しごと
)
をしていた時に散らばした
糸屑
(
いとくず
)
を拾って、その中から
紺
(
こん
)
と赤の絹糸のかなり長いのを
択
(
よ
)
り出して、敬太郎の見ている前で、それを
綺麗
(
きれい
)
に
縒
(
よ
)
り始めた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
主計はそれを
穿
(
は
)
き、
鋏
(
はさみ
)
や
糸屑
(
いとくず
)
や針を、手作りらしい小箱に
納
(
しま
)
った、都留は「お片付け申しましょう」といって、その箱のほうへ手を差出した、主計は渡そうとしながら
晩秋
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして終日庭むきの部屋で針をもっていると、
頭脳
(
あたま
)
がのうのうして、寿命がちぢまるような
鬱陶
(
うっとう
)
しさを感じた。お島は
糸屑
(
いとくず
)
を払いおとして、裏の方にある
紙漉場
(
かみすきば
)
の方へ急いで出ていった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
針箱と
糸屑
(
いとくず
)
の上を飛び越すように
跨
(
また
)
いで、茶の間の
襖
(
ふすま
)
を開けると、すぐ座敷である。南が玄関で
塞
(
ふさ
)
がれているので、突き当りの障子が、
日向
(
ひなた
)
から急に
這入
(
はい
)
って来た
眸
(
ひとみ
)
には、うそ寒く映った。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「……すると独仙君はああ云う好人物だから、全くだと思って安心してぐうぐう寝てしまったのさ。あくる日起きて見ると膏薬の下から
糸屑
(
いとくず
)
がぶらさがって例の
山羊髯
(
やぎひげ
)
に引っかかっていたのは
滑稽
(
こっけい
)
だったよ」
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
糸
常用漢字
小1
部首:⽷
6画
屑
漢検準1級
部首:⼫
10画
“糸”で始まる語句
糸
糸瓜
糸杉
糸織
糸底
糸魚川
糸口
糸巻
糸目
糸蒟蒻