かざ)” の例文
巾幗きんかくというのは、まだこうがいかざす妙齢にもならない少女が髪を飾るぬのであって、蜀の人はこれを曇籠蓋どんろうがいともいう。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
びん真白ましろき手を、矢を黒髪に、女性にょしょうの最も優しく、なよやかなる容儀見ゆ。を持てるが背後うしろに引添い、前なる女のわらべは、錦の袋を取出とりいで下よりかざし向く。媛神、半ばかざして、その鏡をる。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
月をかざし、花を着て、牛車に乗りあるき、あの少将、この朝臣あそんと、浮かれ男相手に恋歌などを取りわして、源氏物語の中の女性みたいな生活を、一ぺんでもしてみたい。
ただ一人……はぎすらりと、色白く、面長おもながな、目のすずしい、年紀とし十九で、うたもふしもなんにも出来ない、総踊そうおどりの時、半裸体にみのをつけて、かいをついてまはるばかりのあはれな娘のみ、おのかざして仔細ない。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
自然、親房の声望は一ばい高く、彼みずからは法衣の宰相で剣もたいしていないが、つねに鬢頬びんづらに花をかざした大童子を左右にめしつれ、宮中の出入にはてぐるまを用い、日夜、軍議のていにみえる。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
襟脚えりあし長くたまべて、瑩沢つややかなる黒髪を高く結んだのに、何時いつの間にか一輪のちいさな花をかざしていた、つまはずれ、たもとの端、大輪たいりんの菊の色白き中にたたずんで、高坂を待って、莞爾にっこむ、美しく気高きおもざし
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そんな者の妻とは見えぬ嫋々なよなよしさであった。なしの花みたいな皮膚である。いやいや、かりに五ツぎぬを曳かせ、雲のびんずらに、珠のかざしかざさせなば……と、鬼六はめまいのような空想にとらわれた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菊をやかざし 舞い酔わん
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)