竹箒たけぼうき)” の例文
これも竹箒たけぼうきでドブドロ掻きまわすようにペン先が重たくなって、引っこみの付かない悪臭がプンプンと鼻を打って来るのです。
スランプ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
取込んでろくに雪もかなかったのでしょう、下男の与次郎が、浅黄あさぎの手拭を頬冠ほおかむりに、竹箒たけぼうきでセッセと雪を払っております。
ある夕方、三吉が竹箒たけぼうきを持って、家の門口を掃除したり、草むしりをしたりしていると、そこへ来て風呂敷包を背負った旅姿の人が立った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、自分の身を、押売りしてみても、笑われたり、呶鳴られたり、乞食あつかいされて、竹箒たけぼうきで追われたりするだけだった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうしておいてから、さて改まった気持になって、堂の後ろから竹箒たけぼうきを探しきたって、落葉を掃いて、堂前の道筋を、すっかり清めてしまいます。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
老人連、全然すっかりれ込んでしまった。いつにも大河、二にも大河。公立八雲やくも小学校の事は大河でなければ竹箒たけぼうき一本買うことも決定きめるわけにゆかぬ次第。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
竹箒たけぼうきちり取りとを持ちながら、庭男らしい中年の男が、ノッソリと外へ出て来たが、庭男などとは思われない、博徒か遊び人かそんな見当の男の、持っているような隙のない眼で
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すなわち、腰はまがり、顔はさらにやせ、真白の頭髪はぼうぼうとのび、あのかっこうよくかりこんであったあごひげも、のびほうだいにのびて、すり切れた竹箒たけぼうきのようになっていた。
火星兵団 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お手が障った所だけはしましても痛みませぬ、竹箒たけぼうき引払ひっぱたいては八方へ散らばって体中にたかられてはそれはしのげませぬ即死そくしでございますがと、微笑ほほえんで控える手で無理に握ってもらい
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は熱湯をっかける前に、竹箒たけぼうきの柄をもって、猛烈に物理的操作を試みた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
竹箒たけぼうきの短いので板の間を掃除している。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
ぼくらが参詣している間に、竹箒たけぼうきを持った二、三名の陵墓管守が、そこらの落葉をかき集めて、番茶をわかしてくれる。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半蔵はその辺に立てかけてある竹箒たけぼうきを執って、古い墓石の並んだ前を掃こうとしたが、わずかに落ち散っている赤ちゃけた杉の古葉を取り捨てるぐらいで用は足りた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その翌日の朝、与八は竹箒たけぼうきで庭を掃いていますと、ほかの女中は昨夜の疲れで寝ているのに、みどりの部屋のみは障子があいて、もう起きているようです、それとも夜通し寝なかったものか。
竹箒たけぼうきを持って、厩のまわりを掃き始めた。主人の眼が届かないところ程、馬糞や落葉やわらくずが溜っていた。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最初にほふられた南部牛は、三人掛りで毛皮も殆んどぎ取られた。すこし離れてこの光景ありさまを眺めると、生々なまなまとした毛皮からは白いいきの立つのが見える。一方には竹箒たけぼうきで板の間の血を掃く男がある。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
乾分ののん竹は、いきなり竹箒たけぼうきほうり出して、与兵衛のいる茶の間まで一息に飛び込んで来た。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と半蔵が竹箒たけぼうきを手にしながら言った。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
袖無そでなし羽織を着、小桜の革足袋かわたびに新しい藁草履わらぞうりをはき、鮫柄さめづかの小脇差を一つ横たえて、武士とも町人ともみえず、ただ何処やらゆかしげな風格のある人が、竹箒たけぼうきを持って——ふと
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、その棒の先に、九ツの龍の肌は、まるで竹箒たけぼうきもてあそばれる蜘蛛くものように、離されては伏せられ、逃げかけては絡みつけられ、果ては、死に絶えたかのごとく、へたばってしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本阿弥光悦ともある人の母子おやこが、なんでこの山里の人もわぬ伽藍がらんなどに来て、しかも寺の雑人ぞうにんすら怠っている山の朽葉などを、竹箒たけぼうきを持って、こんな暗くなるまで掃除しているのだろうか?
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その煙の下には、竹箒たけぼうきを持っている城太郎の姿がすぐ聯想された。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)