眼先めさき)” の例文
八のふかくしながら、せたまつろう眼先めさきを、ちらとかすめたのは、うぐいすふんをいれて使つかうという、近頃ちかごろはやりの紅色べにいろ糠袋ぬかぶくろだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
すべて向うのいところだけがこう一度に眼先めさきへ散らつき出すと、ちょっと安心した私はすぐ元の不安に立ち返るのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
眼先めさきの迷いに駆られて、折角の苦労を水の泡にしてはいけない。お前の慾望はもっともっと大きかった筈ではないのか
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
これはあるいは私の幻覚であったかもしれぬが、その蒼褪あおざめた顔の凄さといったら、その当時始終しじゅう眼先めさきにちらついていて、仕方が無かったが、全く怖い目に会ったのであった。
青銅鬼 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
またかつて、ある老僧の幽霊観を聞いた事があったが、それは、人がもし死ぬという瞬間には、その人の過去に経て来た、一生涯の光景が、必ずその人自身の眼先めさきに見えるものだと、いっていたが
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
けれどもかれあたまには其日そのひ印象いんしやうながのこつてゐた。うちかへつて、はひつて、燈火ともしびまへすわつたのちにも、折々をり/\いろいたひらたいとして、安井やすゐ御米およね姿すがた眼先めさきにちらついた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
部屋へやなかは、まどからすほのかなつきひかりで、ようやもののけじめがつきはするものの、ともすれば、えたばかりの青畳あおだたみうえにさえ、くらかげななめにかれて、じっと見詰みつめている眼先めさき
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)