目鏡めがね)” の例文
だいぶ目がうすくなつたので、目鏡めがねが一つほしいと思つて、ためておいたお金をお財布に入れて目鏡やさんに行きました。おばあさんは
おもちや の めがね (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
その張りたるあぎとと、への字に結べる薄唇うすくちびると、尤異けやけ金縁きんぶち目鏡めがねとは彼が尊大の風にすくなからざる光彩を添ふるやうたがひ無し。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すべ是等これらこまかき事柄はほとんど一目にて余のまなこに映じつくせり、今思うに此時の余の眼はあたかも写真の目鏡めがねの如くなりし
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
鏡子は意識もなしに先刻さつきから時々その人に物を云つて居た黒目鏡めがねが南の夏子であることに漸く気が附いて来た。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
羊羹色ようかんいろになった黒セルの夏服、汚れた鳥打帽、大きな塵よけ目鏡めがね、赤革の長靴という出立ちだ。そして自動車を呼んで、客席へは乗らず、本物の運転手の隣へ腰かけた。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
茶微塵ちゃみじん松坂縞まつざかじま広袖ひろそで厚綿あつわたの入った八丈木綿の半纒を着て、目鏡めがねをかけ、行灯あんどんの前で其の頃鍜冶かじの名人と呼ばれました神田の地蔵橋の國廣くにひろの打ったのみと、浅草田圃の吉廣よしひろ
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
勿論太陽をのぞ目鏡めがねは光線を避ける為に黒く塗ってある、しかしそれですらもまぶしくて見ていることが出来ぬ。いわば肉眼で常の太陽を見る様なものだ、強いて見ていれば目がつぶれるのだ。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
俺の目鏡めがねに曇りはない、お前は本当に昔の真弓なら、この千代之助が忘れられないばかりに、髪を剃り落して此処ここに居るに相違はない、俺は百人の女を弄んだ、他の事は一切解らない人間だが
百唇の譜 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
中納言家には御存じゆゑ斯樣かやうに仰上られしものなるべし此時このとき將軍には御不審の體にて御在おはしますにぞ又申上らるゝ樣はかの綸言りんげんあせの如しまた武士ぶしに二言なしとか君のお目鏡めがねにて名奉行と仰せられ候越前天下の御ため
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小さい 目鏡めがね
朝おき雀 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
からぬ口髭くちひげはやして、ちひさからぬ鼻に金縁きんぶち目鏡めがねはさみ、五紋いつつもん黒塩瀬くろしほぜの羽織に華紋織かもんおり小袖こそで裾長すそなが着做きなしたるが、六寸の七糸帯しちんおび金鏈子きんぐさりを垂れつつ、大様おほやうおもてを挙げて座中をみまはしたるかたち
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
多くの僧俗に出迎はれて出て来た人は田鶴子姫たづこひめではなくて、金縁の目鏡めがねを掛けて法衣はふえの下に紫の緞子どんすはかま穿はいた三十二三のやせの高い僧であつた。御門主ごもんしゆ御門主ごもんしゆと云ふ声が其処此処そこここからおこつた。
御門主 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)