疲弊ひへい)” の例文
が、たちまち一面に、民力の疲弊ひへいという暗いあえぎが社会の隅から夕闇のようにただよい出した。巷の怨嗟えんさ。これはもちろん伴ってくる。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
露国との戦争が済んでから間もない頃で、日本の農村は一般に疲弊ひへいしていた。彼等の村はことにひどいようだった。
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
双方ともに国力が疲弊ひへいするは必然の理で、もしその上に実際戦争でも始めたら経済上両国ともにつぶれてしまう。
戦争と平和 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
その頃のアイヌの生活はまったく疲弊ひへいの一語につき、明日の糧をも知らないおぼつかない毎日が続いていた。
就中なかんずく問屋の制度は生産者を極度に疲弊ひへいさせました。商業主義は誠実を棄てて利慾に飢えています。機械主義は手工を奪ってすべてを凝固させてしまいました。
民芸とは何か (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
疲弊ひへいした村のことで御布施おふせの集りがよかろうはずはない。金包みの代りに米とか野菜ですますような習慣が次第に一般にひろがって、禅僧は食うだけが漸くだった。
禅僧 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
専制時代の疲弊ひへい堕落だらくせる平民の生活をうかがひ、身につまさるる悲哀の美感を求めし所以ゆえんとす。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かみ驕奢けうしやしも疲弊ひへいとがこれまでになつたのを見ては、己にも策の施すべきものが無い。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
如何に多くの農村疲弊ひへいの原因となつてゐるか、思ひ半ばに過ぎるものがあるのです。
「明治も末期の頃で、農村はそろ/\疲弊ひへいを感じ出していました。心あるものは海外渡航に眼を向けていた時でした。テキサス州の移民米作ということが頻りに世間の口に唱えられていました」
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
なに極楽ごくらくつていらつしやいましたが、近来このごろ極楽ごくらく疲弊ひへいましたから、勧化くわんげをおたのまれで、其事そのこと極楽ごくらくらしつたのでございませう。岩「極楽ごくらく勧化くわんげかえ、相変あひかはらず此方こつちてもおいそがしい。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
蒙古もうこ襲来のさい、人的や経済的にもさんざんな消耗に疲弊ひへいしたあげく、なんの恩賞もうけず、逆に、鎌倉幕府でうけのいい大名が受領ずりょうにあずかって
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
然し、その巨大なる費用のために、諸国は疲弊ひへいのどん底に落ち、庶民は貧窮に苦しんでいた。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
しかるに今の天下の形勢は枝葉しえふんでゐる。民の疲弊ひへいきはまつてゐる。草妨礙くさばうがいあらば、またよろしくるべしである。天下のために残賊ざんぞくを除かんではならぬと云ふのだ。そこで其残賊だがな。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
先帝、創業いまだ半ばならずして、中道に崩殂ほうそせり。今天下三分し益州は疲弊ひへいす。これ誠に危急存亡のときなり。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな疲弊ひへいした山村では淫売がむしろ快活な労働にもなるのだろうが、見るからに快活、無邪気、陽気で、健康な女がいるのである。そういうだるまの一人がこの店にもいた。
禅僧 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「いま貴国の強兵を以て魏を攻めらるれば、魏は必ず崩壊ほうかいきざすであろう。わが蜀軍が不断に彼を打ち叩いて、疲弊ひへいに導きつつあるは申すまでもありません」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし国力はかなり疲弊ひへいしていたものだろう。蜀将の意気もすでに昔日せきじつの比ではない。帝以下百官、城を出て魏門にひざまずき、城下の誓いを呈したのである。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さりとて彼の頤使いしに甘んじて、蜀を伐つには、その戦費人力の消耗には、計り知れぬものがあり、これに疲弊ひへいすれば、禍いはたちまち次に呉へ襲ってくるであろう。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日蓮宗にちれんしゅう小伽藍しょうがらんで、住職は老年で寝たきりだし、若い住僧が二人して維持していたが、戦乱つづきで、村は疲弊ひへいしているし、檀家だんかも離散するばかりなので、形こそ違うが
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉はまず朝廷の疲弊ひへいしきった経済面に貢献こうけんをはかり、貧しい公卿を救恤きゅうじゅつするに努めた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
長年にわたる平家文化の絢爛けんらんは、それだけ地方の疲弊ひへい枯渇こかつを意味している。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……かかる状態に一応現状を訂正しておいてから、呉としては、間諜を用いて徐々に曹操と玄徳との抗争をさそい、玄徳のそれに疲弊ひへいしてきた頃を計って荊州を奪り上げてしまえばよいのです
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、国庫の疲弊ひへいとにらみ合わせて、はらはらしていた程なのである。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
農民の疲弊ひへいよみがえってきた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
想像以上な疲弊ひへいである。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)