異形いぎやう)” の例文
こんな事を、二人で話してゐる内に、やがて、丫鬟あくわんの案内で、はいつて来たのを見ると、せいの高い、紫石稜しせきれうのやうな眼をした、異形いぎやうな沙門である。
酒虫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
日中なれども暗澹あんたんとして日の光かすかに、陰々たるうち異形いぎやうなる雨漏あまもりの壁に染みたるが仄見ほのみえて、鬼気人にせまるの感あり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かくて嫉みと怒りにたへかね、異形いぎやうの物を釋き放ちて林の奧に曳入るれば、たゞこの林たてとなりて 一五七—一五九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
すると、下のに異形いぎやうな物が現はれて大きな目を剥いてゐたので、腰を拔かして泣き出した。
泡鳴五部作:01 発展 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
又はかの「天才」かの「英雄」或は大人たいじん超人てうじん、すべていまはしき異形いぎやうのものを敬せむや。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
異形いぎやうをして蒸氣の立ちのぼつてゐる鍋の傍の 棚の上に
鳥料理:A Parody (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
異形いぎやうかたこそ照らせ、花のななつ。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
異形いぎやうむしのわざはひか。
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
その時、弟子の眼には、朦朧とした異形いぎやうかげが、屏風のおもてをかすめてむらむらと下りて來るやうに見えた程、氣味の惡い心もちが致したさうでございます。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
羽をくるまに殘してこれを異形いぎやうの物とならしめその後獲物えものとならしめし鷲は常に世繼なきことあらじ 三七—三九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
南瓜かぼちやへたほどな異形いぎやうものを、片手かたてでいぢくりながら幽霊いうれいのつきで、片手かたてちうにぶらり。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その時、弟子の眼には、朦朧とした異形いぎやうの影が、屏風のおもてをかすめてむらむらと下りて来るやうに見えた程、気味の悪い心もちが致したさうでございます。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「……ほこらえんしたましたがね、……御存ごぞんじですか……異類いるゐ異形いぎやういしがね。」
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のどをしめられるやうな呻き声に変つたと思ひますと、やつと良秀は眼を開いて、針で刺されたよりも慌しく、矢庭にそこへね起きましたが、まだ夢の中の異類いるゐ異形いぎやう
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
唯今たゞいまおびれたをさないのの、じつたものにると、おほかみとも、とらとも、おにとも、ともわからない、すさまじいつらが、ずらりとならんだ。……いづれも差置さしおいた恰好かつかう異類いるゐ異形いぎやうさうあらはしたのである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まことこの時の「れぷろぼす」が、山ほどな長櫃を肩にかけて、行列の人馬を目の下に見下しながら、大手をふつてまかり通つた異形いぎやう奇体の姿こそ、目ざましいものでおぢやつたらう。
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)