玉章たまづさ)” の例文
かげから、すらりとむかうへ、くまなき白銀しろがねに、ゆきのやうなはしが、瑠璃色るりいろながれうへを、あたかつき投掛なげかけたなが玉章たまづさ風情ふぜいかゝる。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
〽せめて恨みて玉章たまづさと、薄墨に書く雁の文字、女子の念も通し矢の、届いていまは張り弱く、いつか二人が仲の町に、しつぽりぬるる夜の雨……
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
金糸銀糸の刺繍ぬひとりをほどこした裲襠うちかけ、天地紅の玉章たまづさを、サツと流して、象の背に横樣に乘つた立兵庫たてひやうご、お妙の美しさは、人間離れのしたものでした。
銭形平次捕物控:315 毒矢 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
古池に飛び込むかはづは昔のまゝの蛙であらう。中に玉章たまづさ忍ばせたはぎ桔梗ききやう幾代いくだいたつても同じ形同じ色の萩桔梗であらう。
虫干 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
〽雁がとどけし玉章たまづさは、小萩のたもとかるやかに、へんじ紫苑しおんも朝顔の、おくれさきなるうらみわび……
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
玉章たまづさを今は手にだにとらじとや さこそ心におもひすつとも
〽雁がとどけし玉章たまづさは、小萩のたもとかるやかに、返辞へんじしおんも朝顔の、おくれさきなるうらみわび……
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
折々をり/\そら瑠璃色るりいろは、玲瓏れいろうたるかげりて、玉章たまづさ手函てばこうち櫛笥くしげおく紅猪口べにちよこそこにも宿やどる。龍膽りんだういろさわやかならん。黄菊きぎく白菊しらぎく咲出さきいでぬ。可懷なつかしきは嫁菜よめなはなまがきほそ姿すがたぞかし。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)