玄翁げんのう)” の例文
こんどこそ間違まちがいはないと玄翁げんのうおもって、ひょいとがりますと、どうでしょう、さっきの石のあったところがほんのりあかるくなって
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
多勢手が揃つたところでいろ/\手分けをしてさがすと、第一番に縁の下に役り込んであつた血だらけの玄翁げんのうを文七が見付けてくれます。
ひとりはおのを持ち、ひとりは大鍵を持ち、ひとりは玄翁げんのうを持ち、その他の者ははさみ火箸ひばし金槌かなづちなどを持ち、テナルディエはナイフを手に握っていた。
があんと頭をひとつ、玄翁げんのう殴打なぐられたような気がした。彼はよろめきながら、女の顔を正面からじッと見据えた。
梟の眼 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
那須野の殺生石が玄翁げんのう和尚の一かつによって砕かれたのは、それから百年の後であったと伝えられている。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
翌日の新聞は、稲川先生のことを大きな見出しで「純真なるたましいむしばむ赤い教師」と報じていた。それは田舎いなかの人びとの頭を玄翁げんのうでどやしたほどのおどろきであった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
二人で礁の頂上へあがって玄翁げんのうっておるうちに、どうしたはずみかあれと云う間に、二人は玄翁をり落すなり、転び落ちまして、あんな事になりましたが、銀六の方は
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
玄翁げんのうか何かで一度に叩ッ殺し、そのまま線路上へ投げ出して置く——が、しかし、この場合の犯人は、既に僕等も見て来た様に、実に不自然な、むしろ芝居みた道具立をしている。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
ぼんやりたたずんでいようものなら、——一瞬間でも、懐疑と倦怠けんたいに身を任せようものなら、——たちまち玄翁げんのうで頭をぐゎんとやられて、周囲の殺気は一時に押し寄せ、笠井さんのからだは
八十八夜 (新字新仮名) / 太宰治(著)
先刻さっきも先刻、今も今、優しいこと、嬉しいこと、可愛いことを聞くにつけ、云おう云おうと胸を衝くのは、罪も報いも無いものを背後うしろからだましうちに、岩か玄翁げんのうでその身体からだを打砕くような思いがして
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
玄翁げんのうで打っても潰れそうにない淵老人の頑固づらを凝視した。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
石工は玄翁げんのうを打振り
拡大されゆく国道前線 (新字新仮名) / 広海大治(著)
玄翁げんのう殺生石せっしょうせきまえすわって、熱心ねっしんにおきょうみました。そして殺生石せっしょうせきれいをまつってやりました。殺生石せっしょうせきがかすかにうごいたようでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「寅藏ならあの玄翁げんのうも振り廻せるし、おこのが隣で油を賣つて、暗くなつてから歸つて來ることも知つて居る。——踏込ふみこんで擧げませうか」
その男が今や、鉄棒の両端に鉛のたまのついてる一種の玄翁げんのうをルブラン氏の頭めがけて振り上げた。
玄翁げんのうはつぶやきながら石のそばにってみますと、ちょうど人間にんげんせいたかさぐらいのすべすべしたきれいな石でした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「出来ない事じゃないよ。母親おふくろ共謀ぐるでやれば、思いの外手軽に抜け出せるし、鑿は、又六が居眠りでもしているところを狙って背後うしろから玄翁げんのうか何かで叩き込むんだ」
革命の渾沌こんとんたる開闢かいびゃくの時において、ぼろをまとい、怒号し、荒れ回り、玄翁げんのうをふり上げ、鶴嘴つるはしをふりかざし、狼狽ろうばいせる旧パリーに飛びかかって毛髪を逆立てたそれらの者は
もっともそのためには下女のお寅を手なずけてかかったが、お寅がうるさい事を言うもんで、二度目に行った時、手前ものの玄翁げんのうで一と打ちにやっつけてしまったんだ
ビグルナイユは玄翁げんのうをジャヴェルの足下に投げ出した。
それに金次郎はあの血の着いたあはせを、お此が殺された日は着てゐなかつたといふし、自分の袷にわざわざ血を附けて、血染の玄翁げんのうを縁の下に投り込んで置いたのもをかしい。
ちょうど上がりかまちの影になって誰にもちょっと気の付かないあたりから、二尺ほどの柄の付いた、先の尖った鉄槌てっつい——石屋が石を割る時使う玄翁げんのうに、血潮と脳漿の付いたのを見付け出しました。